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オスプレイ、F35B…馬毛島への最新装備配置で「自衛隊」を押し出す国の狙いは?

(2020年8月12日東京新聞に掲載)

 防衛省が公表した馬毛島(まげしま=鹿児島県西之表市)の自衛隊基地配置案。硫黄島(東京都)で行われている米軍の陸上空母離着陸訓練(FCLP)の移転候補地だが、自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35や垂直離着陸輸送機オスプレイの利用まで盛り込まれた。最新装備で「自衛隊」を前面に押し出す国の狙いは何か。地元では、米軍基地化への反発をやわらげる隠れみのではと疑う声が上がっている。(中山岳、石井紀代美)

種子島からわずか12キロ…住民には不信感

 「FCLPが移転してくれば、私たちの安全な生活が根底から崩される」

 馬毛島から約12キロしか離れていない種子島に住む「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」幹事の清水捷治(しょうじ)さん(77)は、こう憤る。同会は種子島の西之表市民らに反対署名を呼びかけ、これまで約5000筆を集めた。市の人口約1万5000人の過半数の7600筆を目標に、活動を続けている。

 地元で反発が広がる中、山本朋広・防衛副大臣と防衛省幹部が7日、西之表市役所と鹿児島県庁を訪れ、自衛隊馬毛島基地(仮称)の配置案を示した。滑走路はメーンの1本(2450メートル)と横風が強い場合に用いる1本(1830メートル)を交差させて新設。仮設桟橋や火薬庫も含め、島全域に軍事施設が造られる。FCLPは年1、2回を予定し、1回につき10日程度、準備を含めると約1カ月かかるとした。

 見過ごせないのは、ここで自衛隊がさまざまな訓練をする方針も明らかにしたことだ。航空自衛隊が導入し、事実上空母化する護衛艦「いずも」に搭載する予定のF35Bの発着艦訓練のほか、オスプレイや地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を展開する訓練を行う可能性もあるという。

陸上自衛隊木更津駐屯地に到着した輸送機オスプレイ=7月10日、千葉県木更津市=千葉県木更津市で

陸上自衛隊木更津駐屯地に到着した輸送機オスプレイ=7月10日、千葉県木更津市=千葉県木更津市で

 防衛省側は県や西之表市に、東シナ海で活発に活動している中国の脅威を強調し、南西諸島防衛のために「自衛隊の活動場所が必要」と説明。かつて空母艦載機が拠点としていた厚木基地(神奈川県)や、現在拠点とする岩国基地(山口県)の騒音区域と比較しつつ、FCLPの騒音は現段階で正確に見積もれないが、FCLP自体は自衛隊訓練より少なくなるとした。

「南西諸島防衛のため」は隠れみのではないか

 市や県は納得していない。八板俊輔市長は「不明なところが増えたという感じもある。米軍に提供する施設に馬毛島を充てるのが出発点」と疑問視。会談後、報道陣に「日本の法令が届かない米軍の訓練施設が造られる危惧が強い」と述べた。塩田康一知事も「基地の必要性や訓練の具体的な説明を」と注文した。

 防衛省は「FCLP以外の米軍の訓練について現時点で具体的な計画はない。自衛隊の施設として整備し、年間を通じて自衛隊が管理する。米軍が常駐することもない」とする。だが、清水さんは「そもそもFCLPの移転がなければ、馬毛島に基地を造る発想もなかったはずだ。防衛省の説明は、米軍へ恒久的に基地を提供するという目的をぼかしており、まやかしだ」と批判する。

 清水さんは、基地ができれば種子島の上空に米軍機や自衛隊機が飛び回ることは避けられないとし「子育てしている世帯や牛や豚の家畜を育てる農家は、騒音が大きく影響すると心配している。基地の工事で馬毛島周辺の漁場が失われる恐れもある」と危ぶむ。防衛省は近く地元で説明会を開く方針だが、「馬毛島の用地買収をはじめ、これまで市民の頭越しにずっと進められてきた移転計画を、認めるわけにはいかない」と不信感を募らせる。

農業開発団入植も1980年頃からは無人島

 馬毛島では戦後、農業開拓団の入植でサトウキビ栽培や牛の放牧が行われ、最盛期の1959年には約530人が暮らしていた。その後、レジャー施設の誘致話が持ち上がったが、実現に至らず、農業が行き詰まった80年ごろには無人島化した。

鹿児島県西之表市の馬毛島=2018年10月

鹿児島県西之表市の馬毛島=2018年10月

 そんな島が2011年ごろから、厚木基地から岩国基地に移駐する米空母艦載機のFCLPの候補地とされた。現在は岩国から約1400キロ離れた硫黄島で行われているが、より近い場所への移転を米側が要求したからだ。17~18年に岩国移駐が行われた後の19年12月、防衛省は土地所有者から過半を占める土地を取得。価格は当初の査定額の4倍近くの約160億円に高騰した。

 今回明らかになったのは、基地の位置付けもまた、はっきりしないことだ。「南西諸島防衛のため」という説明について、日米安保体制に詳しいNPO法人「ピースデポ」の梅林宏道氏は「自衛隊を前面に押し出した説明は、地元に対する方便」と喝破する。

 中国の潜水艦や戦闘機が南西諸島周辺を通って太平洋に抜ける活動を活発化。梅林氏は「中国脅威論をあおりながら説明すれば、馬毛島の地元も理解してくれると考えたのでは。ただ、当初はFCLPの施設として必要としていたのは過去の経緯から明らか。米軍に対する住民の拒否感を抑えるため、自衛隊を強調している」とみる。

「米軍訓練は年1、2回」うのみにはできない

 元自衛隊1等空佐で軍事評論家の熊谷直氏も、当局側の心理を「地元との話がこじれると、計画が進められなくなると過去の事例を通じて学んでいる。担当者は、どうすれば一番納得してくれるか戦略を練って説明するものだ」と説く。実際には米軍と自衛隊の一体化がいっそう進むことになり、「米軍にとっての馬毛島は、かなり使い勝手のいい施設になることは間違いない」と語る。

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