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五輪で人種差別に抗議 なぜダメなの?人権問題は「政治」とは違うのに…

(2020年10月30日東京新聞に掲載)

 五輪での政治や人種、宗教に関する主張を禁じた五輪憲章について、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は「五輪は政治ではない」として、見直しに消極的な見解を発表した。人種差別反対運動のスポーツ界への広がりに対するけん制とみられるが、「平和の祭典」での人権問題への意思表明が、なぜいけないのか。(中沢佳子)

過去には大会から追放された例も

 「全ての人が互いを尊重し、連帯感を示してこそ五輪の団結力が発揮される。そうでなければ、大会はあらゆる抗議行動の見本市になり、世界を分断する」。27日、バッハ会長は「スポーツと政治」と題する見解で、そう訴えた。

 IOCはスポーツの政治的利用を警戒してきた。五輪憲章50条では、競技会場などでの政治的、宗教的、人種的な宣言活動を禁じている。1968年メキシコ大会の男子200メートルでは、表彰台で米国選手2人が黒い手袋の拳を突き上げて人種差別に抗議し、大会から追放された。今年1月には具体例として、人種差別への抗議で選手が片膝をつく行為を挙げ、政治的なメッセージの掲示やジェスチャーなどを認めないとした。

 だが現在、5月に米国で起きた黒人男性暴行死事件を機に「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事だ)」運動が世界的に広がっている。同調するアスリートも多く、テニスの大坂なおみ選手は全米オープンで被害者の名前入りマスクを着用して注目を集めた。米大リーグ、バスケットボールのNBAなどでも同調する動きが広まる。

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今年9月、警官に射殺された黒人男性の名前が入ったマスクを着用し、全米オープン女子シングルス準決勝に臨む大坂なおみ(AP)

 さらに、米国オリンピック・パラリンピック委員会は抗議表明の容認を目指す方針を示した。カナダの反ドーピング機関で選手の倫理教育もする団体は、50条は選手の表現の自由に関わるとして、IOCに修正を促すと発表した。

 「IOCは歯止めを設けないと、あらゆる政治問題が五輪に持ち込まれ、ボイコットの応酬につながりかねないと恐れている」と、スポーツ文化評論家の玉木正之さんは説明する。実際、76年モントリオール大会で、南アフリカの人種隔離政策に反対するアフリカ諸国が不参加に。80年モスクワ大会は旧ソ連のアフガニスタン侵攻を受けて米国や西側諸国が辞退し、84年ロサンゼルス大会では旧ソ連など東側諸国が報復ボイコットをした。

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