新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

日本バスケ界のパイオニア、田臥勇太選手 40代も現役続行

(2020年8月24日東京新聞に掲載)

 世界最高峰の米プロバスケットボールリーグ(NBA)で日本人初のプレーヤーとなり、現在は日本のBリーグで「宇都宮ブレックス」に所属する田臥勇太選手(39)が、10月から始まる来シーズンで40代に突入する。身体能力の衰えに加え、最近はけが続き。数々の困難を乗り越えてきた田臥選手だからこそ聞いてみたい。試練に打ち勝つ秘訣は何ですか―。(石井紀代美)

24日付メーン田臥

膝の調子をうかがいながら練習に励む田臥勇太選手=宇都宮ブレックス提供

度重なるけがを乗り越え

 宇都宮市の自宅から「こちら特報部」のリモート取材に応じた田臥選手。表情は柔らかいが、あごひげに、眼光鋭い「勝負師」の目。「貫禄がありますね」と水を向けると、「年ですよ」と笑った。

 現在、外出を極力控えながら、チームの練習に参加する日々。混んでいない時間帯を狙いジムにも行く。

 リーグ発足から4シーズン目の前季は、新型コロナの感染拡大を受け、3月で中止となった。「ファンも選手も、安心してバスケを楽しめる状況ではなかった。結果的に、中止の判断はありがたかった」と振り返る。

 当時はけがの手術でリハビリ中。左膝の半月板損傷で、戦線を離脱していた。「急に痛めたわけではなく、長年の蓄積で。少しずつ『今日はちょっと調子悪いな』と感じるようになって」。違和感を抱き、検査をしたら発覚した。

 右利きの田臥選手にとって、左膝はとりわけ重要だ。例えば速攻の際、走りながらシュートを放つとき、ジャンプの踏み切り足は左になることが多い。急にストップするときも、左足を先につき、軸足にして踏ん張りながら、右足で止まる。「軸足なので負担もかかる。ストップの時が特に、結構…」

 全快までに、もう少し時間はかかりそうだ。複雑な表情でこう語る。「100%でいったら半分、いや、もうちょっと行くのかな。普通に走るのは問題ない。実戦からだいぶ離れているから、『バスケの動き』をした時にどうなるか」

泥くさいプレー「高校時代から大切に」

 そもそも、田臥選手は、縦横無尽にコートを駆け回るプレースタイル。時には野球のヘッドスライディングのように、床に転がるボールに飛び込む。動きの激しさが、けがの一因とも言えるのだが、「泥くさいプレーやボールに対する執着心は、高校時代から大切にしている部分。床に転がってるボール(の奪い合い)は、絶対に負けちゃいけないって気持ちでやっている」と本人。どうやら、スタイルを変えるつもりはなさそうだ。

 実は、2シーズン前も腰の痛みに悩まされた。古傷のヘルニアが影響したという。開幕後、約5カ月もの間、プレーできなかった。「けがは本当にきつい。やっぱり気持ちも落ち込みます」と心境を明かす。

 そんな時、いつも支えになるのは、心の底から湧き上がるシンプルな感情だという。

 「けがして動けなくて、痛くてリハビリを続けて。そんな中でも、やっぱりボールを持つだけで楽しくて、『シュート打ちたい』『ドリブルしたい』という気持ちになる。寝ている時も、しょっちゅう夢で試合をしている。『バスケがしたい』という思いが、すべてを上回ってしまう」

 小学2年からバスケを始めて30年以上。「もうやめたい」と思ったことは、これまで一度もない。

米国で「クビ」や挫折も経験

 田臥選手の経歴は華々しい。横浜市金沢区出身で、市立大道中学校時代に全国大会で3位に輝いた。高校はバスケの名門・秋田県立能代工業に進学し、インターハイ、国体、ウインターカップを制する「3冠」を3年連続で達成する。その後、米国留学などを経て、NBAに挑戦。2004年に日本人で初めて、世界最高峰の舞台に立った。

 はたから見ればエリート街道を突き進み、失敗や挫折とは無縁の人生にも思えるが、そんなことはない。

 「米国に行ったらこてんぱんにやられましたし、所属チームからは『君、明日クビね』って言われて急に解雇されたり」。それでも、落ち込んでいる暇はなく、次の所属先を見つけなければ、プレーする機会を失うだけ。「大切なのは、前へ進む一歩を見つけ出し、いかに踏み出すか。そうして挫折からはい上がった時、必ず前よりも成長している」

 米国人選手は筋骨隆々で、手足も長い。そのくせ、スピードもジャンプ力も桁外れ。それに対し、田臥選手は身長173センチと体格は小柄だ。「思わず、ひるんでしまいそうになるのでは」。そう尋ねると、「ひるんだらもったいない。とにかく、自分の力をどれだけ出し切って相手にぶつけられるか。そこで得たものから、新たに見えてくるものがありますから」と即答した。

24日付メーン2

狙いを定め、シュートを放つ田臥選手。「シュートを1本打つだけで、辛いことが吹き飛ぶ」=宇都宮ブレックス提供

 さまざまな難局を乗り越えてきた田臥選手だが、今後、これまでとは質の違う試練がやって来る。次シーズン開幕直後の10月、40歳を迎える。人間には不可避な、身体能力の衰えだ。

この続きをみるには

この続き: 1,095文字

日本バスケ界のパイオニア、田臥勇太選手 40代も現役続行

東京新聞 特報Web

100円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

ありがとうございます。いただいたサポートはさらに読み応えのある記事にしてお返しします!

ありがとうございます! 励みになります!
3
東京新聞で半世紀以上続く名物ページ「こちら特報部」の記事を配信します。モットーは「ニュースの追跡」「話題の発掘」。無料公開の公式サイト「東京新聞 TOKYO Web」https://www.tokyo-np.co.jp では読めない記事がここにはあります。