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市民生活は苦境なのに…コロナ禍でも過去最高益の「年金運用」

(2020年8月23日東京新聞に掲載) 

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、破格の収益をあげている。4月からわずか3カ月間で過去最高の約12兆5000億円もの運用益を出した。2001年度以降の運用益は累積で、国の税収額約63兆5000億円(20年度当初予算)を大きく上回る70兆円超だ。年金制度の維持には追い風となるが、新型コロナウイルスの影響で、営業自粛や解雇の憂き目にあった人たちは続出している。大きくもうけたGPIFにできることはないのか。(古川雅和)

23日付メーンボード

株価の持ち直しでGPIFは破格の運用益を上げたが…=東京都中央区で

3カ月で12兆5000億円

 GPIFは、厚生年金や国民年金の保険料収入の余った分を積立金として管理、市場で運用している。少子高齢化の影響で保険料を払う現役世代が減少するのに備え、将来の年金給付分を確保するためだ。政府が訴える年金制度の「百年安心」の重要な一部を担うのがGPIFといっていい。

 損失が出にくい債券などで運用していたGPIFだが、安倍政権によるアベノミクスの一環で2014年、株式投資の割合を24%から50%に拡大する方針を打ち出した。今年6月末は株式が51.86%、債券48.14%となった。

 4~6月の四半期ベースで過去最高の12兆4868億円の黒字となったのは、コロナ禍で経済状況が急激に悪化したことを受けた各国の対策で、株式市場が一気に持ち直したため。運用している年金積立金も6月末で162兆926億円まで増えた。

 ただ、GPIFが、大事な年金積立金を株式で運用することへの国民の不安は根強い。「ギャンブル」とまで言われることもある。その不安が現実化したのが、今年1~3月だ。コロナの感染拡大の不安が世界に一気に広がったこの期間、世界の金融市場が大混乱に陥ったことでGPIFは過去最悪の17兆7072億円の大損を起こした。

 投資した資金が短期的に増えたり減ったりするのは、株式市場ではよくあること。長期的に見れば、今のところ、年金積立金は元本を割り込んではいない。

「まやかしの利益では」

 GPIFの運用益について、アベノミクスによる「まやかしのもうけだ」と話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子氏。70兆円を超す利益は、異次元の金融緩和を続ける日銀の株式購入に乗っかっただけと指摘する。

 現金化も簡単ではない。70兆円分にも膨らんだ株式や債券などの資産を大量に売却しようとしても、売り注文の急増が相場の急落を招くだけ。株高を追い風にしてきたアベノミクスに、逆に大打撃となる。「そもそも現金化などできない」(荻原氏)というのが、本当のところだ。

23日付メーングラフ

 ただ、GPIFの運用益は増減があっても、積立金は右肩上がりの傾向が続く=図。ニッセイ基礎研究所の井出真吾上席研究員は、年金制度が破綻する不安を否定する。18年度の公的年金支出総額約53兆円の財源は、現役世代の保険料約38兆円、税金など約13兆円で、積立金などは約2兆円にとどまるからだ。「今のところ、年金支給に積立金はほとんど手を付けられていない」と井出氏。約160兆円の積立金からすれば、余裕は十分にある。

 ならば、コロナ禍でかつてないほどの打撃を受けている日本経済の一助にすることはできないだろうか。

「戦後最悪」の経済支援には回せず

 17日に内閣府が発表した4~6月期の実質国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、3・四半期連続のマイナス成長を記録。政府の緊急事態宣言で消費や生産が一気に落ち込んだ時期だ。このペースが1年続くと仮定した場合の年率換算は27.8%減となり、リーマン・ショック後の09年1~3月期のマイナス17.8%を大きく超え、戦後最悪になった。日本経済の回復まで年単位が必要とみるエコノミストは少なくない。

 コロナ禍による営業自粛や解雇で明日をも知れぬ毎日を送っている人からみれば、GPIFの大もうけは恨めしい限りだ。自分たちが支払ってきたお金がこれほど増えたのになぜ、という思いがふつふつとわき上がってもおかしくはない。

 だが、井出氏はGPIFの累積収益を年金以外に使うことを強く反対する。「あるところからとってしまえというのは、無理な話」。年金の積立金を家計で考えた場合、将来のための住宅資金や子供の教育資金を「おなかがすいたからといって、食費に使ってしまっていいのか」と、井出氏は疑問を投げかける。一度使ったら、次はこれ、その次はこれと使われ、「積立金が麻薬のようになってしまう」と警鐘を鳴らす。

23日付メーン森タワー

GPIFが入る虎ノ門ヒルズ森タワー=東京都港区で

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市民生活は苦境なのに…コロナ禍でも過去最高益の「年金運用」

東京新聞 特報Web

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