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「政治無関心 悪いことじゃない」麻生氏が高校生に向け 真意は?

(2020年9月12日東京新聞に掲載)

 麻生太郎副総理兼財務相は9日、通信制高校での授業に登壇し、「若者が政治に無関心なのは悪いことではない」と語った。そのココロは、若者が政治に無関心でいられるほど日本が平和だからだということらしいが、麻生氏が安倍政権を支えたこの7年8カ月の間に選挙権年齢は18歳に引き下げられ、若者の政治参加は政府全体の呼びかけだったはず。無関心ではいられない麻生発言を考える。(榊原崇仁、佐藤直子)

通信制高校の特別授業で

 麻生氏が登壇したのは、出版大手のKADOKAWAなどが開設した通信制高校「N高等学校」が9日に開いた特別授業だった。同校がユーチューブ上で公開している授業動画によれば、麻生氏は「初めて生で麻生太郎を見た人。テレビよりいいと思った人。見る目ある。その眼鏡、変えなくていいよ」と軽口で切り出し、すぐに問題の発言に移った。

 「(会場の)後ろに立っている新聞記者なんかがよく言うセリフは『若者は政治に関心がねぇ』って。いかにも悪いかのごときに言う人はいっぱいいるけど、間違っていると思います。政治に関心がないっていうのは、そんなに悪いことじゃありません。政治に関心がなくても生活できるぐらい、いい生活をしているんですから」

 比較したのは海外の例だった。「アフリカに2年ぐらい住んだことがあります。暴動が起き、えらい騒ぎでした。アフガニスタンや中近東など、ボール蹴飛ばして遊んでいたら地雷踏んで、というところに住む人がいます。そういうところに生まれちゃった子は間違いなく政治に関心があります。嫌でも政治に関心がないと生活ができないから」

日本は政治に無関心でいられるほど平和?

 その上で日本に話を戻し「政治に関心を持たざるを得ない国にいるよりは、政治に関心なくても生きていられるところにいる方がよっぽどいい」と述べた。

 麻生氏の発言は若者たちにどう聞こえたのか。

ユーチューブで公開されている麻生太郎副総理がN高で行った授業の動画=東京都で

ユーチューブで公開されている麻生太郎副総理がN高で行った授業の動画=東京都で

 東京理科大4年の男性(21)は「若い世代が政治に関心を持つのはいいこと。だけど、持たなくても悪くはないと思う。結局はその人次第じゃないですか」と冷めた見方を示す。

 一橋大大学院で教育関連の研究を続ける博士課程一年の男性(25)は困惑の表情を見せた。「今はお金に困っていますし、将来も不透明。大学改革や奨学金の問題は国の政策に大きく左右されるから、政治に無関心ではいられないですよね」

 大学教員の空きは少ない。「30代半ばまで職が見つからない人もいる」。奨学金を頼ろうにも「借りたら返さないといけない。先のことを考えると、ためらってしまう」。アルバイトは週5回に及ぶ。今が「いい生活」とは思えない。

らしい「上から目線」 「民度が違う」発言と同じ

 政治風刺のお笑いで知られる芸人の松元ヒロさんは今回の発言について「あの人らしい」と感じた。

 「麻生氏の物まね歴は10年超」という松元さん。「オタク文化に理解あるそぶりを見せてきたのが麻生氏。それと同様に『あるがままでいい』という体(てい)で語ったのではないか」とみる。

 「よき理解者」なら結構だが、「上から目線」「敵を見下す」などの「らしさ」も強く伝わってきたという。「結局は『日本は他より良い国』と言いたいだけ。コロナ禍で日本の死者が少ない理由について、『民度が違う』と言ったのと同じ。新聞記者にダメ出ししたみたいですけど、それもよく見る光景。自分を持ち上げないマスコミは嫌いだから居丈高に物言いする。常に威嚇していたいんでしょう」

選挙権が18歳以上に引き下げられても…

 実際、若者の政治的関心は高いとはいえない。選挙権が18歳以上に引き下げられて初の国政選挙となった2016年の参院選以降の国政選挙でみると、16年の参院選は10代が46.78%、20代が35.60%(全体54.70%)。17年の衆院選は10代40.49%、20代33.85%(同53.68%)。19年の参院選は10代32.28%、20代30.96%(同48.80%)。全体も低いが、それよりかなり低い。

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高校生に投票の仕組みを説明する静岡県選管の「若者選挙パートナー」の大学生(右)。各地で若者の政治参加を促す取り組みが進んでいるが…=同県菊川市の常葉大菊川高校で

 しかし、若者をめぐる状況は麻生氏が言う通り、政治に無関心でいられるほどに平和なのかは疑問だ。

 「アベノミクス」で株価は上がったが実質賃金は低下。雇用が増えたといっても増えたのは非正規雇用で、男性では2割、女性は5割を超える。こうした親の下で暮らす日本の子どもたちの貧困は深刻だ。厚生労働省の調査で平均的所得の半分に満たない家庭の18歳未満の割合を示す「子どもの貧困率」は18年は13.5%。ほぼ7人に1人で先進国では最低レベル。飲食店の閉店や倒産が相次ぎ、失業者が相次ぐコロナ禍では深刻さを増している。

 困窮家庭の支援に取り組むNPO法人「キッズドア」(東京)の渡辺由美子理事長は「麻生氏が何をもって日本が平和だと言うのか分からない」と憤る。

非正規、貧困…投票率低い世代は割を食う

 キッズドアではコロナ禍の5月、文具と1000円分のクオカードを生活保護世帯などの子ども1万人に贈ったという。「コロナ禍で家庭の収入が減り、とくに1人親家庭は追い詰められている。食事の回数を減らしたり量を減らして、憲法が定めた健康で文化的な最低限度の生活を送れない家庭がいっぱい。これが経済大国日本の姿なのかと思う」

 日本の教育予算は先進国の中でも貧弱で、国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合が経済協力開発機構加盟国の中では最下位だ。

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「政治無関心 悪いことじゃない」麻生氏が高校生に向け 真意は?

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