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開催地がほぼ優勝し、多額の税金が投入されるビッグイベント「国体」の不思議

(2020年9月29日東京新聞に掲載)

 新型コロナウイルスの感染拡大で今秋の開催が延期になった鹿児島国体と全国障害者スポーツ大会が、2023年に開かれることが決まった。国体は2万人超の選手らが集まるビッグイベント。競技の普及や施設整備を促進してきた一方、開催都道府県がほぼ毎年優勝したり、地元に多額の費用負担が生じたりすることに、疑問を呈す見方が少なくない。延期を、在り方を見直す契機にできないか。(中沢佳子、大平樹)

五輪並みの規模

 「県民みんなが待ち望んでいる。開催時期が決まって本当に喜ばしい」。鹿児島県国体・全国障害者スポーツ大会局の川畑敬郎・総務企画課長はこう語る。

 10月に開かれるはずだった第75回国民体育大会(国体)と第20回全国障害者スポーツ大会(スポ大)は、コロナの感染拡大が顕著になった6月、具体的時期を定めずに延期が決まった。今月25日の日本スポーツ協会、日本障がい者スポーツ協会、県、スポーツ庁の四者会議で、2023年に行うことで合意された。

 21年の三重県、22年の栃木県は予定通り。23年の佐賀県以降は、基本的に1年ずつ順送りされる。佐賀大会からは、名称が「国民スポーツ大会(国スポ)」に変わる。

 国体の規模は五輪に勝るとも劣らないといわれ、鹿児島大会の競技数は43(特別競技の高校野球、公開競技を含む)。スポ大は、13の正式競技と3つの公開競技がある。両大会とも参加人数はまだ定まっていないものの、鹿児島県は過去の大会の実績から、選手や監督をはじめ多くの関係者が訪れると見込んでいる。19年の茨城国体には選手、監督、役員だけで約2万3000人が参加した。

国体

19年、茨城国体の総合開会式で点火される炬火

地元への経済効果は数百億円

 一方、205カ国・地域などから1万1000人超の選手が出場した16年リオデジャネイロ大会で実施されたのは28競技。パラリンピックには22競技に159カ国・地域などから約4300人が参加した。日本が派遣した選手は五輪338人、パラ132人だった。

 国体はそれだけのビッグイベントだけに、地元への影響も大きい。九州経済研究所(鹿児島市)は昨年9月、国体とスポ大の経済波及効果を619億円と算出した。施設整備関連で220億~230億円、選手や関係者、観客など約80万人が訪れるとみて宿泊と消費で200億円と見積もった。

 しかし、コロナ禍で来県動向が見通せず、影響を織り込んだ試算はまだ出せない。福留一郎・経済調査部長は「県内の観光業や飲食業は大打撃を受けている。観光業界は金額ベースで七~八割減と推計される。落ち込んだ業界を3年後までどうやって持ちこたえさせるかが課題だ」と話す。

 一方で、地元には財政負担が重くのしかかる。鹿児島県によると、11~19年度に支出した関連費は152億4500万円。会場の改修など施設整備に123億円、競技力向上のための強化指導員の配置などに15億円かけた。また、大会の準備と運営に向けて10年に専従組織を設け、現在120人の職員を充てている。仮に中止になっていたら、そうしたものが無駄になりかねない状況だった。

はじまりは戦後の復興のため

 第1回国体は1946(昭和21)年に開催された。日本スポーツ協会によると、「戦後の荒廃と混乱の中で、スポーツを通して国民に、とりわけ青少年に勇気と希望を与えよう」との趣旨で始まり、会場は戦災を免れた京都を中心にした近畿地方が主だった。

 その後は各都道府県持ち回りになり、87年の第42回沖縄大会で全国を一巡。各地に体育館などのスポーツ施設整備が進んだ。スポーツジャーナリストの谷口源太郎さんは「戦後の日本スポーツ界の発展は、国体がなければ実現しなかっただろう」と語る。

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19年、茨城国体の閉会式で入場行進する茨城県の選手ら

 国体は、各種目の成績によって得られる「競技得点」と、「参加得点」の合計で都道府県ごとに競う。48年の第3回福岡大会からは、男女総合の優勝都道府県に天皇杯、女子優勝に皇后杯が授与されている。

他県や海外からの「強化」が横行、処分も

 64年の新潟大会以降は、ほぼ全てで開催地が総合優勝を果たしてきた。開催地はブロック予選が免除されるといった有利な面があるだけではない。他の都道府県からスカウトした有力選手を地元に就職させて出場させるなど、いびつな「強化」が横行したためだ。谷口さんによると、開催地から請われて引っ越して出場する選手は「渡り鳥」と呼ばれ、かつては海外選手を呼び寄せて出場させたケースもあったという。

 その後、別の都道府県代表になるには一定期間を空ける条件が課されたほか、居住地要件も明確になるなどして一定の歯止めがかかった。それでも2011年、住民票を移しただけで居住実態がなかったなどとして山口県の選手35人が処分されている。

 数少ない例外の一つは02年の高知大会。選手強化と施設整備の予算を縮減し、総合10位に終わった。当時知事だった橋本大二郎さんは「他県からの引き抜きは無駄としか思えなかった。他にもやらなければいけないことはあり、余分な予算を使うわけにいかなかった」と振り返る。

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開催地がほぼ優勝し、多額の税金が投入されるビッグイベント「国体」の不思議

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