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菅政権で注目 「官邸官僚」ってどんな存在? 前政権では忖度政治の温床にも

 菅内閣が発足し、7年8カ月ぶりに主が交代した首相官邸。安倍内閣の継承色が濃い組閣の陰で注目されるのが、前政権で力を付けた「官邸官僚」の去就だ。安倍晋三前首相の側近が退任する一方、菅義偉首相に近い人物の再任も。看板政策を霞が関に受け入れさせ、忖度と政治の私物化を招いた構造はどうなるのか。ノンフィクション作家の森功さんら専門家に聞いた。(中沢佳子、木原育子)

経産省出身の前首相側近は一掃

 「菅首相は好き嫌いが激しい。政治的求心力も弱い。自分に盾突く官僚は避けたいのだろう」

 「官邸官僚」の著書がある森さんは、菅政権が中枢に置いた官僚の顔触れをそう見る。

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 官邸の業務に通じ、さまざまな政策を仕切る彼らには、3つのグループがあるという。まず、安倍前首相の側近と言われた、今井尚哉首相補佐官兼首相秘書官、佐伯耕三首相秘書官、長谷川栄一首相補佐官といった経済産業省出身者。2つ目は、観光政策から先端医療関連まで幅広い分野を扱い、官房長官だった菅首相の右腕とされる国土交通省出身の和泉洋人首相補佐官ら。3つ目は、内閣人事局長として霞が関ににらみをきかせた官僚トップの杉田和博官房副長官、北村滋国家安全保障局長といった、危機管理と公安を担う警察庁出身者だ。

お気に入りは再任、引き上げ

 今回、安倍前首相側近の今井補佐官ら3人が去り、菅首相の信頼が厚いとされる和泉補佐官や杉田副長官は残った。さらに、菅首相は首相秘書官を、自身に仕えた官房長官秘書官で固めた。外務省、財務省などが出身の四氏の他、厚生労働省の鹿沼均官房審議官を新たに起用。「官房長官秘書官は省庁で課長級。重量級の首相秘書官にスライド昇格させるのは珍しい」と森さんは指摘する。

 森さんによると、今井補佐官は安倍前首相の下で「アベノミクス」を支えたが、「『令和おじさん』として知名度が上がり、新型コロナ対応を巡って対立した菅首相を安倍前首相から遠ざけた」という。退任後は官邸助言役の内閣官房参与に就く方向だが、政策を左右する力はなく「参与にするのは、安倍前首相への配慮だ」。

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安倍晋三首相(当時)(左)に帯同し官邸に入る今井尚哉秘書官(同)=2018年4月

 官邸官僚の去就は、「経産省仕切り」の終わりと、「最強官庁」と称された財務省や外務省の復権を意味するのか。森さんは「これまでの『経産時代』は終わる。ただ、経産省内部も一枚岩ではなく、今井補佐官に反発してきた一派が力を伸ばすのでは。一方、経産官邸官僚に取り入っていた財務省は、今は菅首相にすりよりだした。また、外交に通じてない菅首相は外務省にとって手なずけやすい相手だ」と説明する。

 森さんは今、和泉補佐官に注目している。菅首相が官房長官のころ、新型コロナ対応など感染症対策で支えた。一方、加計学園の獣医学部新設を巡り、国会で野党から「文部科学省に対し、手続きを早めるよう伝えたのか」などと追及も受けた。こうして政権を支え続けた経験から「和泉補佐官は『次の今井』になる」という見方だ。

 一連の人事から見える菅首相の思惑について、森さんは「意に沿う官僚を使った、円滑な政権運営だ。代打ではなく長期政権を見据えている」として、きっぱり言う。「首相側近の顔触れが変わっただけで、構図は前政権と同じ。官邸が主導し、官邸官僚が権力を握って仕切っていく」

官房副長官3人、首相補佐官5人以内

 そもそも、「官邸官僚」とはどんな存在なのか。

 各省庁からの出向者などから構成され、内閣法は、官房副長官は3人、首相補佐官は5人以内と定めている。元経産省官僚で政策アナリストの石川和男さんによると、慣例として官房副長官の3人は衆参の国会議員各1人と官僚出身者からなる。「官僚出身者でないと、省庁の要望を抑えられない場面がある」

 重要な政策に対し、首相にアドバイスする役割を担う補佐官や秘書官の仕事には、特に首相の意向が表れやすい。アベノミクスを前面に押し出した安倍政権では、これまで財務省主導だった政策立案が、官邸の経産省出身者の主導になった。石川さんは「今井補佐官はアベノミクスの『懐刀』となるなど、さまざまな施策を進んで提案し、距離を縮めていった面がある。財務省にとっては、面白くない面もあったかもしれない」と語る。

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国会で発言する和泉洋人首相補佐官=2017年7月

 首相秘書官には人数制限はなく、菅政権ではこれまでの6人から7人に増えた。この他、菅首相が大臣を務めた総務省出身の山田真貴子元総務審議官を女性で初めて内閣広報官に起用した。今井補佐官らは退くことになるが、石川さんは「結局は官邸も人間関係。気心知れた人間で周囲を固めたいと思うのは政治家としては自然の流れではないか」と話す。

人事権掌握で霞が関をコントロール

 安倍政権で、官邸のそんな霞が関コントロールを可能にしたのが、人事権の掌握だった。象徴的なのが「法の番人」といわれた内閣法制局長官。従来の憲法解釈の変更を伴う集団的自衛権の行使容認を渋る中、安倍前首相は2013年、容認派の小松一郎・駐仏大使を登用。これにより行使容認が柱の安全保障関連法成立に突き進んだ。

 さらに官邸は14年、内閣官房に内閣人事局を新設。官邸の意にそぐわない職員の排除が可能になり、各省庁の意向が反映されてきた次官人事にも手を突っ込むようになった。局長は今回再任された杉田官房副長官が兼務している。

 「省庁幹部をイエスマンばかりで固めるだけ。政策決定過程をゆがめたと言っていい」と指摘するのは、元財務官僚の田中秀明・明治大教授(財政学)だ。確かに、人事の過度な干渉で官邸への忖度を生み、森友・加計問題や、首相主催の「桜を見る会」の公金による私物化など多くの問題を招いた。

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