見出し画像

共同通信・柿崎明二氏が首相補佐官に メディアと政権の距離感を考える

(2020年10月3日東京新聞に掲載)

 共同通信社の論説副委員長を務めていた柿崎明二氏(59)が1日付で首相補佐官に就任した。政府を批判する立場でもある新聞・通信社の関係者が官邸に入るのは異例。世論対策に力を入れるのが菅政権の狙いとみられる一方で、「政権を監視するのが役目だったはずなのに、メディア全体の信頼を失いかねない」との意見もある。両者の適切な距離感について考えた。 (大野孝志、大平樹)

菅氏と同郷で20年以上の仲

 「(柿崎氏が退職願を出した)2週間ぐらい前はざわついていたけど、今は話題にもならない」。共同通信の40代の男性記者は、社内の受け止め方をこう話す。

 共同通信は新聞社やテレビ局に記事を配信している社団法人。柿崎氏は早稲田大卒業後、毎日新聞社を経て1988年に共同通信へ。政治部員や編集委員を務め、9月30日付で退職した。菅氏から首相補佐官就任を要請され、政権発足に合わせて退職願を出したという。

 柿崎氏は秋田県横手市出身で、菅氏は南隣の湯沢市出身。菅氏が衆院議員になった96年以降、懇意になったとされる。辞令が交付された10月1日の夜、両氏は東京・銀座の秋田料理店で会食している。

 柿崎氏はTBS系の情報番組「ひるおび!」でコメンテーターを務めるなど、テレビ番組出演も多かった。「官邸官僚」の著書があり、本人のことも知るノンフィクション作家の森功氏は「安倍政権には割と批判的なスタンスだった。同郷の菅氏とは昔から仲が良いが、政策に思い切り関与する首相補佐官とは…」と驚く。

マスコミとのパイプ役で起用か

 首相補佐官には国会議員や官僚が就くケースが多い。安倍政権の終盤は木原稔氏ら衆院議員2人と、経済産業省出身の長谷川栄一、今井尚哉(たかや)、国土交通省出身の和泉洋人(ひろと)の3氏の計5人だった。菅政権では木原、和泉両氏が留任。阿達雅志参院議員と柿崎氏が加わり、4人になった。

首相補佐官が執務する首相官邸=東京・永田町で

首相補佐官が執務する首相官邸=いずれも東京・永田町で

 年収は省庁の次官と同等の2300万円余。それぞれ担当があり、加藤勝信官房長官は9月29日の記者会見で、柿崎氏は「政策評価・検証」を担うと述べ、「知識、経験を踏まえて政府全体、政策全般について評価、検証、改善すべき点などについて総理に進言、意見具申などを行う」と説明した。

 仕事は多岐にわたる。森氏は「政策を立案し、政権と一体化する。和泉氏はインフラ輸出のため東南アジアに出掛け、現地の大臣らに会った。首相代理のような立場で政策を執り行う」と説く。柿崎氏起用の狙いは「国民目線で政策を評価・検証したいのかもしれない。ただ、それは国民がやること。菅氏は政権批判が出ないようマスコミに根回しするのが得意だから、パイプ役を担わせるつもりなのか」と見る。

 報道機関出身者が、国会議員を経ずに首相補佐官になるのは初めて。柿崎氏に補佐官就任を受諾した理由などを聞こうと首相官邸に尋ねたが、「日程が詰まっており、官邸への出入り時に本人に『ぶら下がり』で聞くしかない」(担当者)との回答だった。

安倍政権には批判的…懐の深さをアピール?

 菅氏は7年8カ月余り務めた官房長官時代、政府のスポークスマンとして原則1日2回の記者会見に臨んだ。森友・加計学園や桜を見る会の問題を巡り、安倍晋三首相(当時)に代わってメディアの追及の矢面に立ち続けた。

横断幕やプラカードなどを手に森友・加計学園疑惑の徹底追及を訴える人たち=東京・永田町で

横断幕やプラカードなどを手に森友・加計学園疑惑の徹底追及を訴える人たち

 砂川浩慶・立教大教授(メディア論)は、テレビ番組で安倍政権に批判的なコメントをすることが多かった柿崎氏を、安倍政権の継承をうたう菅氏が首相補佐官に起用した狙いについて「著名なジャーナリストに官邸入りのオファーがあるかもと思わせ、批判的なコメントを控えさせる効果がある。したたかなやり方だ」と分析。批判的な人物を一本釣りし、懐の深さをアピールする狙いもあったとみる。

この続きをみるには

この続き: 1,364文字 / 画像1枚
この記事が含まれているマガジンを購読する
このマガジンを購読すると、菅政権に関する多様な話題を週3本ほどお届けします。月6本以上お読みいただけるのであれば、購読していただいた方がお得です。

2020年9月に発足した菅政権の行方を、独自の視点で切り込んでいきます。

または、記事単体で購入する

共同通信・柿崎明二氏が首相補佐官に メディアと政権の距離感を考える

東京新聞 特報Web

100円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

ありがとうございます。いただいたサポートはさらに読み応えのある記事にしてお返しします!

ありがとうございます! 励みになります!
3
東京新聞で半世紀以上続く名物ページ「こちら特報部」の記事を配信します。モットーは「ニュースの追跡」「話題の発掘」。無料公開の公式サイト「東京新聞 TOKYO Web」https://www.tokyo-np.co.jp では読めない記事がここにはあります。

こちらでもピックアップされています

どうなる?菅政権の行方
どうなる?菅政権の行方
  • ¥500 / 月

2020年9月に発足した菅政権の行方を、独自の視点で切り込んでいきます。