見出し画像

巨人・沢村投手のような「格差トレード」は組織や個人を生かすのか

(2020年9月9日東京新聞に掲載)

 プロ野球・巨人の沢村拓一投手(32)がロッテにトレードされた。近年は不振続きとはいえ、ドラフト1位で入団しセーブ王にも輝いた大物投手の交換相手が、今季の1軍出場がない香月一也内野手(24)という「格差」トレードだ。このように一見驚くような人事異動は組織や個人をいかすことになるのか。人事から経済をとらえる「人事経済学」の視点で考える。(古川雅和)

元・巨人の守護神「求められるのはうれしい」 


 救援陣の強化をしたいロッテと、強打の左打者がほしい巨人の思惑で成立した今回のトレード。推定年俸は沢村投手の1億5400万円に対し、香月選手は650万円と、約24倍もの開きがある。


 沢村投手は中大から2011年に巨人に入り新人王を獲得。15年に抑え投手に回り、翌年に最多セーブを獲得した元「巨人の守護神」だ。ただ、近年は故障や制球難に苦しみ、今季は途中で3軍も経験した。

画像1

巨人からロッテへのトレード移籍が決まり、スタッフと握手する沢村投手(右)=8日、川崎市のジャイアンツ球場で


 一方の香月選手は15年にドラフト5位で入団。通算47試合出場、打率は1割7分5厘、本塁打1本と、どう見てもその実績は沢村投手と釣り合わない。それでも、8日にオンラインで入団会見をした沢村投手は「求められるのは、うれしいこと。期待に恥じないように頑張る」と前を向いた。

「専門性を重視した良いトレード」


 腕一本、実力だけで勝負するプロ野球ならではの「人事異動」とも言えるが、会社員ならば、これほどの大きな格差を抱えた異動は、本人も同僚たちも簡単には納得できないだろう。実績を残してきたエリート社員が組織から放り出されたうえ、企業側から「平社員と同程度の価値」と言われたに等しいからだ。


 慶応大の樋口美雄名誉教授(労働経済学)は「組織の活性化を企業が考え、従業員が仕事の幅、能力を広げることができるかを考えるために行われるのが人事異動」と話した上で、人事経済学の視点で考えれば、今回のトレードは「よいトレードではないか」という。


 人事経済学とは耳慣れないが、人事異動、給与、処遇をどのように考えれば、企業が活性化し成長するのか、従業員の成長、キャリア形成につながるのか、を考える学問。そこから考えると、日本企業は人事異動を組織全体から考えるため、異動先が企業にとっても、個人にとってもベストでない場合がしばしば生じる。「適職であるかどうかは、二の次になっている」と、樋口さんは指摘する。


 その上で、沢村投手の場合、「ロッテでも専門性が高い抑え投手として期待されており、本人にも役に立つ」が、一般企業の場合は「仕事の内容という点が、どこまで考えられているのか」と疑問を投げかける。

「適職」軽視で意欲が落ちた人、どうするか

この続きをみるには

この続き: 353文字

巨人・沢村投手のような「格差トレード」は組織や個人を生かすのか

東京新聞 特報Web

100円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

ありがとうございます。いただいたサポートはさらに読み応えのある記事にしてお返しします!

ありがとうございます! 書いた記者に伝えます!
東京新聞で半世紀以上続く名物ページ「こちら特報部」の記事を配信します。モットーは「ニュースの追跡」「話題の発掘」。無料公開の公式サイト「東京新聞 TOKYO Web」https://www.tokyo-np.co.jp では読めない記事がここにはあります。