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石破さん菅さん岸田さん、「桜」きちんと説明しますか?

(2020年9月11日東京新聞に掲載)

 首相主催の「桜を見る会」問題を追及する法律家の会が、自民党総裁選の候補3人に出した公開質問状。安倍晋三首相の辞意表明で世間は幕引きモードだが、実態の解明はほとんど進んでいないことを訴えている。疑惑が消えてなくなったわけではない以上、政府が負の遺産も継承し、国民に説明するのが筋ではないか。「桜」で問われる、次期政権の政治的責任を考えた。(石井紀代美、古川雅和)

法律家の会が公開質問状

 「『桜を見る会』の問題は、安倍政権による政治の私物化が凝縮している。私物化を継承するのかどうか、総裁候補に問わなければいけない」

 全国の弁護士や法学者でつくる「『桜を見る会』を追及する法律家の会」の事務局長・小野寺義象弁護士が、8日に自民党総裁候補の石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長に出した公開質問状の狙いを語る。

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「『桜を見る会』を追及する法律家の会」が出した公開質問状=同会提供

 同会は「桜」問題の真相解明を目的に2月に結成。呼びかけに応じた計941人の法律家が、桜を見る会の前夜祭について、公職選挙法違反(寄付行為)と政治資金規正法違反(収支報告書不記載)の疑いで、安倍首相と後援会幹部を刑事告発している。

私物化引き継がれる懸念

 「桜」問題を「公的行事の私物化、税金の私物化、招待者名簿の廃棄という情報の私物化」と捉える小野寺さん。「昔の自民党であれば辞任させられるはずなのに、そうならない。私物化は自民党の体質として、安倍首相が辞めても引き継がれるのではないか」

 投げかけた質問は5つある。まずは、①安倍内閣が八百人もの後援会関係者を招待したことに問題はないか ②マルチ商法の経営者や反社会的勢力の人物が過去に招待されており、このような人物を招待したことに問題はないか ③招待者の規模や選定方法に問題はないか―を問う。

 法律家の会の泉沢章弁護士は「公正中立な国の公的行事のはずが、自分の票に直結するような人たちが呼ばれている」と指摘する。

 ④招待者名簿とデータの破棄に問題はないか、名簿の再現作業を行うべきではないか―は情報の私物化をただす質問だ。「野党議員が『桜』問題について問い合わせをした当日、名簿が廃棄されている。名簿は廃棄しても、データがパソコンに残っているはず」

 最後は ⑤前夜祭の明細書について公開する必要はないとの認識か。ホテル使用料や飲食代金などは、1人5000円の前夜祭の会費では足りず、安倍首相側が差額分を払ったのではとの疑惑がある。泉沢さんは「ホテルが発行した明細書を出せば、一発で明らかになる」と説明する。

「桜を見る会」で招待客とポーズを取り記念写真に納まる安倍首相(中央)=2019年4月、東京都新宿区の新宿御苑で

「桜を見る会」で招待客とポーズを取り記念写真に納まる安倍首相(中央)=2019年4月、東京都新宿区の新宿御苑で

総裁選3候補は…

 3候補はそれぞれの出馬会見で、森友・加計学園問題と合わせて「桜」問題を再調査するつもりはあるか、聞かれている。「何がどういう問題であるのかということの解明をまず第一にいたし、必要ならば当然やる」(石破元幹事長)、「国会でさまざまな指摘があり、今年は中止をして、これからのあり方を全面的に見直す」(菅官房長官)、「話を聞くのは当然しなければならない。実態が分かった上で何かすることがないか考える」(岸田政調会長)と答えているが、いまひとつはっきりしない。

 質問状の回答期限は10日。法律家の会は、回答の有無も含めて11日にも結果を公表するとしている。

要求したら即シュレッダー

 桜を見る会を巡る政府の対応は隠蔽やごまかしばかりだ。昨年4月、「こちら特報部」が税金で開催しながら安倍首相の「お友達」が目立つ招待客の名前が公表されないことを報道。共産党議員が5月に内閣府に国会質問用の資料を要求したところ、その日にシュレッダーにかけられた。

 10月に「しんぶん赤旗」が安倍首相の地元後援会員が多数招かれていたことを報じ、国会を揺るがす問題に。首相官邸前で抗議活動が続き、今年1月には東京都新宿区で「私の税金、花見に使うな」と市民団体がデモを行った。

コロナ禍でうやむやに

 ところが、3月以降は新型コロナウイルスの感染拡大で、疑惑解明がうやむやになってしまった。首相が辞任する理由はあくまでも体調問題で、私物化の責任ではない。批判に答えないまま去って行く今、国民の怒りは、どこにぶつければいいのか。

 「積み残された問題は同じ政党であろうが、別の政党であろうが、次の政権が責任を果たす必要がある」と語るのは、千葉商科大の田中信一郎准教授(政治学)。国会や国民に説明責任を負うのが政府だからだ。桜を見る会を巡る法的、道義的問題の解明は「誰かが取り組まなければいけないこと」で、自分と関わりがそれほどなければ「次の首相は取り組みやすいはずだ」と指摘する。

 にもかかわらず、次の首相候補者からあまり前向きな声は聞こえない。逆に本命の菅官房長官は「安倍政権の継承」を掲げ、「問題を解明する気がない政権をつくろうとしている」(田中さん)という。

第3次安倍改造内閣の記念写真。安倍首相、石破地方創生相(当時)、岸田外相(同)、菅官房長官がそろっていた=2015年、首相官邸で

第3次安倍改造内閣の記念写真。安倍首相、石破地方創生相(当時)、岸田外相(同)、菅官房長官がそろっていた=2015年、首相官邸で

 なぜ、首相候補らは解明しようとしないのか。次の総裁が誰になっても「自公政権という形は変わらないからだ」と話すのは上智大の中野晃一教授(政治学)。「首相が安倍さんから次の人に代わり、目先を変えるだけ」で、追及は自公政権にとってプラスにはならないからだとみる。

かつて見られた自浄の動き、今は見られず…

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