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よりよく生きるために、「死」を思い準備を ~ 司祭が残した教え

(2020年9月11日東京新聞に掲載)

 死をタブー視せずに向き合う「死への準備教育」を唱え、「死生学」を日本に定着させた上智大名誉教授でカトリック司祭のアルフォンス・デーケンさんが6日、88歳で亡くなった。近しい人との死別をどうやって乗り越えていけばいいのかという問いに答え、ホスピスを回るなどして終末期医療の在り方にも影響を与えた人物だった。(中沢佳子)

息子を亡くし…心の痛み分かち合う

 「身近な人の死は私に何かを教えてくれた。デーケンさんと出会い、そう考えるようになった」。大和・生と死を考える会(神奈川県大和市)の古谷小枝子代表(83)が振り返る。

 11歳だった長男を心臓の病気で亡くして10年たった頃、夫に誘われデーケンさんの講演へ。がんを告知された主人公が、余生を公園造りにかける映画「生きる」(黒沢明監督)を何度も見たと聞き、子ども時代に脇役で出演した古谷さんは縁を感じ、講演後に話し掛けた。デーケンさんに請われて自身の体験を人前で語ると共感の声を受け、心の痛みを他者と分かち合う場が必要と考えるようになったという。

イエズス会から派遣、上智大で「死の哲学」

 1932年にドイツで生まれたデーケンさんは、59年にイエズス会から派遣されて来日。上智大で「死の哲学」を教え、死への準備教育を提唱して死生学を広めた。賛同者は各地で「生と死を考える会」を設立している。

上智大で講演するアルフォンス・デーケンさん=2012年3月、東京都千代田区で

上智大で講演するアルフォンス・デーケンさん=2012年3月、東京都千代田区で

 「死への準備をすることは、よりよく生きること」。デーケンさんはそんな言葉で、他者や自分の死を身近に考えるよう促した。同時に、死には肉体的な死と、生きる意欲を失う「心理的な死」、病を患った時に寄り添う人がいない「社会的な死」、文学や音楽など心の潤いを感じる生活ができなくなる「文化的な死」の4つの側面があると主張。全ての「死」に目を向け、生活の質を高める大切さを訴えた。

終末期医療にも尽力

 各地のホスピスを訪れ、終末期医療の改善にも尽力した。「彼には2つの大きなことを教えられた。人は必ず死ぬと認識する大切さと、準備をする必要性だ。この教えを基に私は『誕生日は死を思い、準備を』と言ってきた」と振り返るのは、デーケンさんと親交があった淀川キリスト教病院(大阪市)の柏木哲夫・名誉ホスピス長だ。

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