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コロナ禍に国葬? 矛盾、違和感、疑問だらけの中曽根元首相合同葬

(2020年10月1日東京新聞掲載)

 10月中旬に営まれる故・中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬が物議をかもしている。法的根拠もなく9600万円もの公費支出することの妥当性、コロナ禍で「密」を避けてと呼びかける政府が1400人の参列者を集める矛盾、他の首相経験者との扱いの違い、そもそも政治的に毀誉褒貶のあった人物を「国葬」扱いすることへの違和感…。次々と浮かぶ疑問点について考えてみた。(石井紀代美、中山岳)

「自民の金でやればいいのに…」

 「コロナ禍の最中に『えー?』と思いました。雇い止めで失職した人もいるのに、3密もいとわず。やるなら自民党のカネでやればいいのに、税金を使うのかって」

 落語家の立川談四楼さんは、中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬のニュースを知り、そう感じたという。国の支出は9643万円。「自民党議員と関係者が5万円持って2000人参列すれば済むことじゃないのかね」とツイッターで発信。他にも、タレントのうじきつよしさんやお笑い芸人の村本大輔さんらが続々と批判の声を上げた。

合同葬1

中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬の準備に当たる実行委員会の初会合であいさつする加藤官房長官(左)=首相官邸で

 政府は9月25日、昨年11月に亡くなった中曽根元首相の合同葬経費として、2020年度予算の予備費から支出すると決定。費用総額は約2億円で、内閣と自民が折半する。菅義偉首相が葬儀委員長だ。

 二階俊博幹事長は「国、自民党として精いっぱいのことをして、お見送りするのが当然だ」との立場。「無駄」には厳しい河野太郎行政改革担当相も「無駄がないようコントロールしてもらいたい」と述べ、野党の枝野幸男・立憲民主党代表も「政府支出の透明性を確保することが中曽根先生の遺志にもかなう」と、合同葬自体には賛意を示す。

 内閣・自民党の合同葬は、1980年7月の大平正芳元首相が初。以降、岸信介(87年9月)、福田赳夫(95年9月)、小渕恵三(2000年6月)、鈴木善幸(04年8月)、橋本龍太郎(06年8月)、宮沢喜一(07年8月)の各氏も実施されている。

 それ以前となると、サンフランシスコ講和条約締結時の首相だった吉田茂氏は、閣議決定により戦後唯一の国葬(1967年10月)となった。沖縄返還を果たした佐藤栄作氏は内閣、自民党、国民有志による合同葬(75年6月)だった。

国庫支出がないケースも

 ただ、歴代首相で見れば、必ずしもこうした合同葬だったわけではなく、内閣が主催に入らない形式もあった。鳩山一郎、石橋湛山、池田勇人の各氏は国庫支出がない「自民党葬」。

 ロッキード事件で有罪判決を受けた田中角栄氏の場合は、内閣が主催に入ると世論の反発を招くため、自民党・遺族の合同葬という形だった。竹下登氏は、生前に「葬儀は地元でささやかに」と希望していたため、故郷の島根県掛合町(現雲南市)と自民党、遺族との合同葬。短命政権に終わった宇野宗佑氏も地元の滋賀県で自民党葬だった。

 内閣府合同葬準備室の武石毅課長補佐は「内閣が主催に入るかどうかは、その人の功績やこれまでの先例などを総合的に勘案して判断している。明文化された基準はない」と話す。

 内閣とは、政府のことだ。政府が主催し、経費に税金が使われる葬儀は、つまりは「国葬」ということなのだろうか。武石氏は「『国葬』は、戦前の天皇勅令である国葬令に基づいて実施されたものだけを言い、戦後は行われていない。吉田元首相のケースも国葬ではなく、あくまでも内閣主催の『国葬儀』と呼んでいる」と話す。

合同葬3

吉田茂元首相の国葬=1967年10月、日本武道館で

 内閣府合同葬準備室によると、17日に予定される中曽根氏の合同葬には各国の駐日大使約200人を含めて計1400人ほどが参列予定。新型コロナウイルス対策として、会場のホテル受付入り口に検温のサーモグラフィーを設け、参列者の密集を避けるため主会場と別に部屋も用意するという。

多くの高齢者が参列…心配の声

 それでも、本当にそれで十分と言えるか分からない。東京都内では9月30日に新たに194人の感染が確認され、収束には程遠い。コロナ禍での開催は妥当なのか。昭和大の二木芳人客員教授(感染症学)は「参列者は高齢者も少なくないとみられ、このタイミングでの開催は心配だ」と危ぶむ。

 二木氏は、政府が9月19日にプロ野球やサッカーJリーグの入場制限を緩和したり、今月1日から観光振興策「Go To トラベル」に東京都発着の旅行も追加したりした点も不安要素に挙げる。「矢継ぎ早に経済対策が打たれたため、もし2週間後に感染者が増加しても原因がどこか分かりづらい。感染者が増えれば、政府は合同葬を延期する柔軟性も必要ではないか」

 政府と自民党で折半する約2億円の経費を巡っても、疑問がある。党には税金を含む巨額の政党交付金が支払われている。党負担分に政党交付金が使われれば、結果的に公金支出が膨らむことにならないか。二階幹事長は9月29日の記者会見で「費用に言及するつもりはない」と突っぱねた。党本部も「葬儀の詳細が決まっていない部分もあり、党のどの費用を充てるかはまだ把握できていない」と答えるのみだ。

合同葬2

中曽根康弘元首相の遺影に手を合わせる弔問客=2019年11月30日、群馬県高崎市の青雲塾会館で

 そもそも自民党は政府とは別の「政党」であり、特定の支持者のために活動している。中曽根氏の長男の中曽根弘文参院議員、孫の康隆衆院議員も所属する。千葉商科大の田中信一郎准教授(政治学)は「合同葬は、自民党関係者の冠婚葬祭に内閣が公費を出して補助することに等しく、不適切だ」と問題視する。

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