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西村担当相、年末年始17連休って…コロナ禍の暮らしは見えてますか?

(2020年10月29日東京新聞に掲載)

 新型コロナウイルス対策で政府が呼びかけた年末年始休暇の延長が「17連休」と受け止められ、批判が止まらない。西村康稔経済再生担当相は帰省や初詣、旅行の分散を求めただけと火消しに躍起だが、そもそも国民は今、そんなに自由に休める状況なのか。感染拡大防止を掲げながら、人の移動を促す「Go To キャンペーン」は続けたまま。実は一部業界への経済対策なのでは、といぶかる見方も出ている。 (木原育子、佐藤直子)

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生活苦で年末年始のバイトを探してるのに

 「あの発言にはイラッとしました。政治家は国民の暮らしぶりが全く見えていないんだなって」

東京駅付近を歩く人たち。年末年始の予定は…=東京千代田区で

東京駅付近を歩く人たち。年末年始の予定は…=東京都千代田区で

 28日のJR東京駅前。茨城県取手市に住む実母を迎えに来た東京都杉並区の田中優子さん(39)は、いら立ちを隠さなかった。23日の新型コロナウイルス感染症対策分科会の後、西村担当相が「12月25日ぐらいから(来年1月)11日まで休みを取るのも一案だ」と語ったことだ。

 2021年は1月4日が仕事始めのため、三が日に集中しそうな人出を分散させる趣旨。だが、ネットでは土曜日の12月26日からの「最大17連休」と受け取られ、広まった。

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 田中さんは5年前に離婚。現在は息子(10)と2人暮らしで、都内のメーカーに派遣社員として勤めている。「雇い止めはなかったが、給与は半分。少しでも穴埋めするため、年末年始も働けるアルバイトを探している。生活は本当に苦しい。政治ってこんなに非情でしたっけ?」

「在宅ワークの次は休暇?」苦笑い

 都内の塾で中学生に英語を教える女性(32)も「17連休なんて夢のまた夢」とあきれる。「例年、元旦しか休みがない。特に今年は学校が休校だったため、塾が頼られる場面が多かった。政治家の方は、国民にはいろんな立場の人がいることをご存じないのかしら」

 システム系ベンチャー企業に勤める森谷理之(たかゆき)さん(41)も「もうスケジュールを組んでいる」ため、長い連休はとれないという。「そもそも緊急事態宣言のころ、あれだけ在宅ワークの推進を叫んだ。弊社は出社は月2回。在宅ワークの次は休暇ですか…」と苦笑いする。

境内を埋め尽くす参拝客ら=6日、東京都千代田区の神田明神で

境内を埋め尽くす参拝客ら=今年1月、東京都千代田区の神田明神で

 反響の大きさに驚いたのか、西村担当相は27日の記者会見で「(17連休を)『やってくれ』と推奨しているのではなく、正月三が日に集中しないよう分散をお願いするのが趣旨だ」と釈明した。

「日本は政治と現実社会が完全にズレている」

 長くコロナ対策を担当している大臣と思えない情報発信ぶりだが、分散して長い連休を取れる人も多くはなさそうだ。製造業エンジニアの桑野晃さん(50)は「仕事が集中して、ただでさえ一番慌ただしい時期。今言われても…」と困惑。大手銀行に勤める杉本将司さん(28)も「年末年始は分散休暇でさえ調整が難しいのでは。現実的でない」と話す。

 政府系銀行に勤める女性(52)は「前半、後半に分けて休むことはできるかもしれない。政府系だからやらされるかも」と話したが、「携帯料金など、政治が国民の暮らしに直接手を入れる場面が多過ぎる。改革は進むかもしれないが、国主導で急激に事を進めるとひずみが出る」と危ぶむ。

 水産高校などでタンカーなどの乗組員を指導する講師の広瀬陸大(りくと)さん(19)は数週間海上で働く一方で数週間の休みがある仕事だが、「年末年始はもう実習が入っている」という。食品会社社員でオランダ国籍のマルコ・ヨンケルさん(48)も「まだ分からないが、17連休は取れないのでは。日本は政治と現実社会が完全にズレている」と首をかしげた。

感染対策には逆効果…結局は経済対策?

 波紋を広げた年末年始の休暇延長の呼びかけを、専門家はどうみるのか。

 第一生命経済研究所の永浜利広・首席エコノミストは「休日を増やせばその分人出が増え、感染対策には逆効果になる可能性がある。日本は祝日が多いし、政府が本気で感染対策というなら、極論すれば一斉に人出が増える正月休みをなくし、有休取得を促すぐらいにしないと」と話す。

 だが、そうはならない。永浜さんは「うがってみれば、休日増加が感染対策だというのは疑わしく、結局は経済対策だと思わざるをえない。コロナ禍で観光業界はおよそ年額で訪日外国人客が4兆円、国内旅行分が5兆円の損失を受けたとされるが、『Go To トラベル』で1兆円を取り戻すと意気込んでいる」

「ブレーキとアクセルを同時に踏んでいる」

 そもそも政府は、夏の盆休みのころは外出自粛のために「オンライン帰省」を奨励していた。帰省ラッシュも近年は一時期に集中せず、分散する傾向にあるのに、わざわざ休日を増やす必要があるのか。

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