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日本を襲う「最強級」台風 数十年に1度が近年は毎年…なぜ?

(2020年9月4日東京新聞に掲載)

 台風9号が通り過ぎ、今度は台風10号が接近している。最強クラスにまで発達する見込みで、「伊勢湾台風並み」と関係機関が注意を呼び掛けている。とはいえ、61年前の台風に、ピンとくる人は少ないはず。いったいどのような台風だったのか。なぜ、最強クラスの台風が近年、日本を次々と襲うのか。(古川雅和、木原育子)

伊勢湾、狩野川、第2室戸…歴史に残る台風とは

 日本の南を進む台風10号は、5日から6日にかけて発達し、奄美群島付近では中心気圧が915ヘクトパスカルになると予想されている。その勢力の強さから伊勢湾台風並みの影響を心配する声が出ている。

 伊勢湾台風は愛知、三重両県を中心に甚大な被害をもたらした昭和の3大台風のひとつ。1959年9月26日、中心気圧929ヘクトパスカルで上陸した。いまだに語りぐさになるとはいえ、生々しい体験を記憶している人は、若くても70歳に迫る。

 「グォォォ、ゴォォォ」。伊勢湾台風が上陸した日、愛知県東浦町石浜に暮らしていた成田信子さん(70)=同県岩倉市=ら3姉妹は異様な暴風の音で目が覚めた。成田さん宅は当時、木造平屋建て。長女の信子さんは9歳だった。夜に浸水し始めると、間もなく床下の水が部屋の畳を軽々と持ち上げた。

伊勢湾台風で水没し、マヒ状態になった名古屋市南区大同製鋼付近=昭和34年9月28日写す

伊勢湾台風で水没し、マヒ状態になった名古屋市南区大同製鋼付近=昭和34年9月28日写す

 家の近くを流れていた川の堤防が決壊していた。当時6歳の次女・松山峰子さん(67)も「せっかく買ってもらった服も、全部水に漬かっちゃって悲しくてね」。ひな人形や自宅に届いたばかりの新品のオルガンも、封を開けないままプカプカと部屋に浮いていた。

 さらに水位が上がり、1階の天井に迫ってきた。水流が強く、外に出るのは難しい。両親は壁を破って、少しだけ高い所にある隣家に逃げようとした。

父が壁を壊し一命「水への恐怖 今も」

 母が信子さんと当時2歳の3女・増田弥生さん(63)を両脇に、父が峰子さんを抱えながら、家の壁を壊そうと何度も繰り返し素手で殴った。「奇跡だったと思う」。何とか壁を壊し、家族は一命を取り留めた。

 翌朝、目に飛び込んだのは「茶色に染まった街」。ヘドロの異臭が鼻を突き、川にはタンスや死んだ豚が流れていた。高台に住む人が分けてくれるおにぎりで数日をしのいだ。信子さんは「台風被害のニュースをみるたびに、あの悪夢を思い出す。今も水への怖さはある」と振り返る。

 河川の氾濫だけでなく、名古屋港で観測史上最高の3.89メートルを記録した高潮が海抜ゼロメートル地帯を襲った。死者・行方不明者は明治以降最悪の5098人に上り、全壊・流失家屋は4万戸余、浸水被害は36万戸余になった。

 昨秋、東日本台風が接近した際、気象庁は狩野川台風を例えに警戒を呼びかけた。58年9月に首都圏を直撃した台風だ。洋上では887ヘクトパスカルまで発達。川の氾濫や土砂崩れで1269人が犠牲になった。52万戸が浸水した。

 ちなみに、上陸時に中心気圧が最も低かったのが、61年9月に大阪湾岸に高潮などによる被害をもたらした第2室戸台風。925ヘクトパスカルで、伊勢湾とほぼ同じ40万戸が浸水した。

 一方、犠牲者は202人と大幅に少なくなった。大阪府西大阪治水事務所防災対策課主査の丸山志野さん(48)は「事前に避難命令を出したり、休校措置を初めて取ったりと、対策を怠らなかったと聞いている」と語った。

ゴルフ練習場倒壊、関空連絡橋にタンカー激突

 最近の台風は、歴史に名を残す台風に匹敵するほど、勢力の強さと被害の大きさが際立っている。そして数十年に1度ではなく、毎年のように各地に大きな被害を出している。

 今年は5月に台風1号が発生し台風2号は6月、7月はゼロで8月に7回発生した。8月末までの発生のペースとしては、2016年の11回以来の少なさだ。この年は1号が7月3日の発生と1951年の統計開始以降、2番目の遅さになったが、同月以降に増え最終的に平年並みの26号まで発生した。

 過去の被害をみると、昨年は9月に台風15号が首都圏を直撃し、千葉県市原市でゴルフ練習場の鉄柱が倒壊。同県などで3週間近く停電や断水が続き、生活に大きな支障が出た。

 その1カ月後には東日本台風と気象庁が名前を付けた台風19号が東日本を縦断。神奈川県の箱根で総降雨量が1000ミリを超えた。河川の氾濫もいたるところでおこり、13都県で死者・行方不明者が90人を超えた。

 関西空港が浸水し、タンカーが関西空港連絡橋に衝突して通行止めが続いたのは、2018年9月3~5日の台風21号だ。台風の強さを示す階級のうち、2番目の「非常に強い」で25年ぶりに上陸。日本損害保険協会によると、保険金の支払額(見込み)は1兆678億円にのぼり、1970年から行っている調査で、最高額の被害となっている。

海水温の高さで発達も「今年は異なる」

 近年、勢力が強い台風が相次ぎ日本を襲う原因はどこにあるのか。

 海面の水蒸気を取り込み、成長するのが台風だ。横浜国立大の筆保弘徳(ふでやすひろのり)教授(気象学)は「海上の水蒸気が台風の燃料になって馬力が増す、と考えると分かりやすい」と説明する。

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