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トランプ氏だけじゃない 世界各国の常識外れの政治家をどう見極めるか

(2020年11月10日東京新聞に掲載)

 開票作業が長引いていた米大統領選がようやく決着し、ジョー・バイデン前副大統領(77)の勝利が決まった。この4年間、世界中を騒がせたのは、敗れたドナルド・トランプ大統領(74)の度重なる暴走。ただ、常識に外れた行動を取る政治家は国内外に多数いて、いったんなってしまえば任期中に辞めさせるも容易ではない。有権者はどんな心構えで投票に臨むべきなのか。(石井紀代美、榊原崇仁)

60年代と一字一句同じ表現で…

 「率直に言うと、でたらめでひどかった」。日本女子大の藤永康政教授(米国黒人現代史)は、人種差別問題に対するトランプ氏の姿勢をこう総括する。

 印象に残るのは、5月に会員制交流サイト(SNS)で発信された「略奪が始まると、銃撃戦が始まる」という言葉だという。ミネソタ州で黒人男性が白人警官から首を圧迫されて死亡し、全米で抗議行動が拡大している最中に飛び出した。

 これは、1960年代に白人の警察署長が使用した言葉。「黒人略奪者は即座に撃ち殺せという意味合いで使われ、トランプ氏は一字一句、同じ表現をした。白人至上主義の有権者らを意識しており、度を超えていた」(藤永氏)

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ミネソタ州の黒人男性死亡事件を受けた「略奪が始まると、銃撃戦が始まる」というトランプ氏のツイートは、ルール違反として表示が制限されている(下段)=ツイッターから

根底にあるのは被害者意識

 トランプ氏は就任間もない2017年1月、環太平洋連携協定(TPP)を離脱する大統領令に署名するなどし、国際的にも波紋を広げてきた。その後も連邦政府機関への命令となる大統領令を連発し、新型コロナウイルスの感染拡大が顕著になった今年5月には「中国寄り」といった理由で、世界保健機関(WHO)からの脱退を表明。移民流入を防ぐため、メキシコとの国境に壁を造る計画にも着手している。

 そうした常識外れの政策を次々に打ち出したトランプ氏が念頭に置いていたのは、白人のナショナリストとされる。第2次大戦後、グローバル化が進展して多くの移民が米国に押し寄せたため、雇用が奪われ、白人中心の文化も崩壊したといった考えを持つ層だ。慶応大の渡辺靖教授(現代米国論)は「米国は正当な分け前をもらえていないという被害者意識が、トランプ氏や白人支持層の根底にある」とみる。

「手法が目立つだけ」との指摘も

 米国には大統領を弾劾裁判にかける制度がある。トランプ氏は1868年のアンドルー・ジョンソン、1998年のビル・クリントン氏に続き3人目の対象になった。下院の過半数で訴追が可決され、上院の3分の2が賛成すれば罷免できるが、3人とも上院で規定数に達せず無罪になった。

 米大統領の権限は限定的で、トランプ氏は暴走していたわけではないとの見方もある。立教大の松原宏之教授(アメリカ史)は「衆院選で勝った政党の代表者が首相を務め、立法と行政を掌握できる日本と違い、大統領は議会から独立して選ばれる。法案を作ったり、予算を自由に組んだりはできない。SNSで直接国民をあおり、政治的原動力にしていくという、過去に誰もやらなかった手法が目立つだけ」と解説する。

 とはいえ、行政府の長、軍最高司令官、外交の最高責任者を担い、大統領令を出せる。法案への拒否権などもあり、米大統領が持つ力は大きいといえる。

著名人が権力を握る背景は

 トランプ氏ほどではないにしろ、世界を見渡すと、常識を超えた振る舞いをする政界のトップは他にもいる。ブラジルのボルソナロ大統領は新型コロナウイルス感染症を「ただの風邪」と言い切り、対策を重視するマンデッタ保健相を更迭。各州知事と市長が独自に進める商業施設閉鎖や外出自粛要請を非難した。

 常識の範疇に収まらない人物でも、抜群の知名度を武器に権力を握るケースがある。まさにトランプ氏がそうだ。1980年代から全米屈指の不動産王として知られ、2004年からはテレビのリアリティー番組に出演。十数人の応募者がトランプ氏の部下になり、最後まで解雇されなかった1人が高年俸で採用される展開は好評を博し、番組は11年続いた。

 政治ジャーナリストの泉宏氏は「選挙は人気投票の側面があるだけでなく、有権者の間には往々にして閉塞感や政治不信が広がっている。そんなときに注目を集めやすいのが著名人。知名度がある上、『従来型の政治家とは違う何かをやってくれる』と期待される」と話す。

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