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生き残りへ綱渡り続く銚子電鉄 経営難にコロナ禍で大打撃 自虐ネタ商品販売も

(2020年10月8日東京新聞に掲載)

 千葉県の東端・銚子市を走るローカル私鉄。以前から厳しかった経営が新型コロナ禍でいっそう深刻になった。減った運賃収入を補おうと、あの手この手を繰り出している。ただ、JR各社ですら記録的な大赤字になるなど、鉄道会社はどこも苦しい。経営規模の小さいローカル私鉄ならなおさらだ。海へと向かう電車に揺られながら、ローカル私鉄の行く先を考えた。  (大野孝志、中沢佳子)

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各駅には命名権で付けられた「副題」が。銚子駅の名に決意がこもる=千葉県銚子市で

 東京駅から特急で約2時間。JR銚子駅のホームの端が、銚子電気鉄道(銚子電鉄=銚電)の銚子駅だ。駅名標には命名権を買った人が付けた「絶対にあきらめない」の愛称。だが、コロナ禍で減便し、接続するはずの電車は運休だった。

 50分ほどして現れた2両編成は1962年製造。もともと京王線を走っていた。伊予鉄道に譲渡された後に銚電が買った中古の中古で、車体にはさびが浮く。カメラ片手の鉄道ファンら15人ほどを乗せて、モーターがうなりを上げる。

運賃収入4480円の日も

 電車は車体を上下左右に揺さぶりながら、自転車並みの速さで走る。沿線の木々の枝が車窓をなでる。全長6.4キロ、片道20分足らずで、終点の外川駅。実家が駅近くの小泉陽花さん(29)が、長男湊ちゃん(1つ)に電車を見せていた。

 「銚電で高校に通った。当時は座れないこともあった。高校を出てからは車を使ってばかりで、ほとんど乗っていません」

 乗客の大半が観光客。通勤通学に使う人は15%ほど。そんな銚電はかつてないピンチに直面している。

 「新型コロナの緊急事態宣言が出た直後、4月18日は土曜なのに1日の運賃収入が4480円。大型連休の運賃収入は前年比95.8%減。資金繰りが急激に悪化した」

銚子2

光発電の腕時計を蛍光灯の下に吊した本社で仕事をする竹本勝紀社長

 仲ノ町駅にある木造平屋の本社で、竹本勝紀社長(58)が語る。銚子らしく、駅前のしょうゆ工場から香ばしい匂いが漂ってきた。

 減収に加え、来年度には40年以上使い続けた変電所の更新が迫る。これに2億円はかかる。銚電はこの窮地を「自虐ネタ」で乗り切ろうとしている。

売れる物なら何でも売る

 「経営状態がまずい」から「まずい棒」というスナック菓子、「経営がサバイバル」で「鯖威張るカレー」、線路の石が入った缶詰、電車の音を録音して配信―。売れる物は何でも売ろうとし、インターネットでも注文を受け付けている。

 そんな銚電を応援する人が全国にいる。観光客が増え、客足は前年比の8割まで戻った。商品の売れ行きも好調。竹本さんは「会員制交流サイト(SNS)で『賞味期限が迫る』と売り出したら、4月後半だけでネットでの売り上げが1200万円を超えた。1年分を半月で売っちゃった」と語る。さらに、メインバンクからの緊急融資と国の給付金でなんとか資金繰りするつもりだ。

 千葉市の大学生高橋杏乃さん(22)は、苦境を訴えるテレビ番組や動画サイトを見て乗りに来た。乗客増の策を聞くと高橋さんは「市外から呼び込まないと。駅の位置情報を集めるスマートフォンのゲームがあるので、そういうサブカルチャーと連携すれば、若者や外国人にウケるのでは?」と語った。

 終点の1つ手前の犬吠駅から、沿線有数の観光地、犬吠埼灯台まで歩いて5分ほど。駅を降りると、他に歩く人の姿はなかった。

 同僚4人で灯台を訪れた銚子市の会社員女性(23)は「車ならいろいろな所に行ける。いつも車を使っているから、電車という発想がない」と明かす。取材中、何かを暗示するような強い風雨に見舞われた。

最盛期は年間250万人の乗客も

 犬吠埼への遊覧鉄道を前身に1923年、開業した銚電。昭和期に年間250万人を超えた乗客は平成には100万人を切った。車の普及、人口と観光客の減少が影響した。そして当時の社長が1億円超を着服し、2006年に逮捕された。補助金や金融機関の融資は打ち切り。そこに線路や踏切の改善、車両の検査、修理の費用がのしかかった。

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銚子電鉄が売り出した「まずい棒」(上)や線路の石の缶詰(左下)など

 危機を救ったのが、同社が販売している「ぬれ煎餅」。「電車の修理代を稼がなくちゃいけない」といううたい文句が評判になり、一晩で3000件を超える注文が殺到した。ただ、今でもぬれ煎餅頼みの厳しい経営は変わっていない。

 そしてコロナ禍。映画「電車を止めるな!」を、クラウドファンディングで集めた資金で制作して公開。この収益と「自虐ネタ」のネット販売、行政の補助金がコロナ対策だ。竹本さんは「危機を笑って乗り越えようという姿勢の方が、柔軟なアイデアが浮かぶ。鉄道を存続させて地域に恩返しする。そのために真剣にふざけている」と話す。

各地のローカル私鉄も苦境に

 厳しいのは銚電だけではない。新型コロナ禍の影響で、ローカル私鉄の苦境は甚だしい。感染拡大が深刻になった後の4~6月期、広島電鉄(広島市中区)は、鉄道やバスなど運輸部門の営業収益が、前年同期比47.9%減。富士急行(山梨県富士吉田市)も、運輸部門の営業収益は同75.1%減まで落ち込んだ。

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