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不妊治療に光 菅首相の旗振りで保険適用の方針も効果の程は?

(2020年9月25日東京新聞に掲載)

 菅義偉(すがよしひで)首相が不妊治療を保険適用の対象にする方針を示し、検討が始まった。大半が自由診療のため1回数十万円、合計で数百万円以上にもなる支出を強いられる当事者の負担を軽くし、少子化対策につなげたいという考えだ。体外受精によって生まれる子どもは16人に1人にまで増え、珍しい存在ではなくなっている。保険適用は、少子化対策にどこまで効果があるのか考えた。(中山岳、大平樹)

「私の時に保険があれば…」6年の治療で500万円

 「私の時に保険適用されていたら、もっと早く体外受精に踏み切れたと思う」。約6年にわたって不妊治療を続け、5年前に長女を授かった40代の女性会社員はこう振り返る。

 女性が治療を始めたのは34歳の時。人工授精で結果が出ず、医師から体外受精を勧められた際、あまりに高額だったため1年ほどちゅうちょしたという。その後、体外受精と顕微授精を繰り返して妊娠に至ったが、治療費の合計は約500万円に上った。

 不妊は、妊娠を望む健康な男女が避妊せずに性交しても1年程度、妊娠しない状態を指す。治療は、排卵時期に合わせて性交する「タイミング法」、精液から精子を取り出して子宮に注入する「人工授精」などがある。それで妊娠しないと、卵子と精子を受精させて子宮に戻す「体外受精」、顕微鏡で見ながら針で精子を卵子に注入する「顕微授精」へ進むのが一般的だ。

経済的理由で延期・断念は54%

 現在、保険適用の対象になるのは検査など一部。1回30万円以上かかる体外受精や顕微授精は患者の経済的な負担が大きい。

赤ちゃんを抱く女性=東京都内で

赤ちゃんを抱く女性=東京都内で

 不妊に悩む人を支援するNPO法人Fine(ファイン)が2018~19年に約1500人に聞いた調査では、1回の平均治療費が50万円を超えると回答したのは体外受精で43%、顕微授精で60%。治療費の総額は100万円以上が56%、うち7%は500万円以上と答えた。また、経済的理由で治療を延期、断念するなどした人は54%に上った。

今や16人に1人の赤ちゃんが体外受精

 不妊治療は珍しいものではない。国立社会保障・人口問題研究所によると、15年に、5.5組に1組の夫婦が検査や治療を受けた。17年には体外受精(顕微授精を含む)で、全体の出生数(約94万6000人)の16人に1人に当たる5万6000人余が誕生した。

 国や自治体は費用の助成制度を設けている。ただ、治療開始時に妻が43歳未満の夫婦、合計所得730万円未満といった条件があり、助成額は1回数万~30万円程度にとどまる。

 ファインの松本亜樹子理事長は、不妊治療の患者には「身体的」「精神的」「経済的」「時間的」の4つの負担があるといい、「保険適用が実現すればありがたいものの、それで患者の悩み全てが解決するわけではない。周りの『まだ子どもをつくらないの?』との心ない言葉に傷ついたり、職場に相談できないまま治療と仕事の両立に苦しんだりする人は多い」と話す。

質や費用にばらつき 情報開示を

 さらに、医療機関の間で治療の質や費用にばらつきがあるとし「治療実績もほとんど開示されず、患者は医療機関選びに苦労している。保険適用の議論で終わらせず、情報開示の在り方を含めたガイドラインの整備など、安心して幅広く治療先を選べる環境づくりを進めてほしい」と求めた。

 菅政権は少子化対策重視の姿勢を打ち出しており、新婚世帯の引っ越し代などを支援する補助金を2021年度に現在の倍の最大60万円に増やす。不妊治療の保険適用は早ければ22年度に実現させる考えで、それまでは助成制度を拡充して対応する。

 課題もある。健康保険の財源は国民の保険料と税金。保険適用する場合、不妊を病気と定義し、治療の効果を確認することが必要になる。体外受精や顕微授精といった高度医療のどこまでを適用対象にするかの議論もこれからだ。

法制化に立ちはだかる多くのハードル

 「保険適用で多くの病院が不妊治療に参入すれば、技術不足のところも出てくる。治療の信頼性が低下する恐れがある」。日本受精着床学会常務理事の杉山力一(りきかず)・杉山産婦人科理事長は危ぶむ。

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