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水際がちがち、市中ゆるゆる…どこか変だよ日本の「コロナ対策」

(2020年8月22日東京新聞に掲載)
 「今まさに第2波の真っただ中」と日本感染症学会がいうコロナ禍。都内で21日に258人の感染が新たに確認される状態でも「Go To トラベル」は続く。一方、国内に感染者が広がっているのに、「水際対策」も継続中。帰国した人は検疫で陰性と分かっても、空港近くのホテルに2週間、自腹で留め置かれる。この国のコロナ対策、どこか変では?(木原育子、中山岳)

22日付メーン羽田

照明も薄暗く、閑散とした羽田空港の国際線到着ロビー=東京都大田区で

帰国者は陰性でも2週間隔離

 「日本政府は、国民に丸投げだなって思います」。人影まばらな羽田空港国際線到着ロビー。留学先の豪州メルボルンから帰国した片山香純さん(30)が、疲れ果てた表情でベンチに座っていた。通訳を目指して2年間豪州で学び、コロナ禍でオンライン授業に切り替わったため帰国した。

 21日午前5時すぎに到着。唾液でのPCR検査を受け、係員から今後の滞在先や移動手段を聞かれた。30分ほどで陰性の結果が出たが、ホテルのチェックイン時刻まで10時間以上も空港から出られない。

 政府は帰国者に対し、2週間は接触者を極力少なくするため、電車やバスなどの公共交通機関を使わないよう求めている。片山さんの両親は岡山県で暮らす。迎えはなく、空港近くのホテルで「隔離」となる。

22日付メーン書類

成田空港の検疫で渡された「陰性」を示す紙(一部画像処理)

 陽性であれば、病院か行政が確保したホテルへ。陰性なら宿泊費は自己負担となる。川崎市内のホテルを2週間分、自分で予約した片山さんは「不謹慎だけど、重症化しない程度の陽性が良かった。せめて宿泊費の20%、30%を国が負担してくれるとありがたいのですが…。2週間、地方出身者にはつらい」とぼやきながら、公共交通機関扱いではないホテルに向かうシャトルバスに乗り込んだ。

「口約束では全く意味ない」

 シアトル便で帰国したのは、米国の大学院に通う男性(25)。家族が愛知県刈谷市の実家から、6時間かけて車で迎えに来た。「検査で陰性なら、ここまで行動を制限しなくてもいいでしょう。東京にとどまる方が危ないし、こんな口約束みたいな形では全く意味がない」と首をかしげる。

 オランダから帰国し、成田空港近くのホテルに2週間滞在した九州の男性(69)は「隔離」の間、近くの商業施設に買い出しに出掛けたと明かす。宿泊費は妻(68)と2人で計12万円。ホテル内のレストランは高額で「とてもじゃないがお金がなくなる。陰性のうちに早く東京を抜け出したかった」と振り返る。

 感染症対策では、検疫官の質問に虚偽の申告をすると、検疫法違反となる可能性がある。だが、公共交通機関の利用を控えるのは政府の要請事項。つまり「お願い」なので、守らなくても罰則はない。

 赴任先のタイ・バンコクから九月に帰国予定の東京都の会社員男性(49)は、国際電話での取材に、こう憤る。「日本は市中感染に歯止めを掛けられていないのが問題なのに、なぜ帰国者を危険視するのか」

 帰国者の陽性率が高ければ「隔離」も理解されそうなものだが…。厚生労働省検疫所業務管理室の担当者は「各空港でのPCR検査の数と陽性率は取りまとめているが、公表目的で整理していない。公表の予定もない」と突き放した。

小さな業者救えない「Go To」

 疑問符がつくコロナ対策といえば、1カ月前に「ウイルスを広めるだけでは?」と疑われながらも始まった「Go To トラベル」がある。旅行代金の半額相当を国が賄う観光支援で、約1兆3500億円を投じる。加えてJR東日本と西日本は20日、インターネット予約で新幹線チケットを3割~半額以下で買えるサービスを始めた。

22日付メーン小池

記者会見で、認証ステッカーについて説明をする東京都の小池百合子知事=都庁で

 しかし「Go To」では東京都民や都内の発着ツアーは除外。一方で、都内では7月22日~8月20日に新型コロナの感染者が約8500人増えた。全国でも同期間に約3万3000人増えている。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)の清沢正人専務理事は「お盆でも多くの観光地は人出が低調だった。まだまだ厳しい」と危機感を募らせる。

 宿泊業者が「Go To」に参加するにはオンラインなどで登録が必要だが、17日時点で登録した業者数は約1万6300と全国約3万5000の半数に満たない。全旅連の加盟業者の6~7割は中小事業者といい、清沢氏は「家族経営などでは、パソコンを使える経営者がいない場合もある。中小の事業者には登録は難しい」と話す。

 城西国際大の佐滝剛弘教授(観光学)は「『Go To』事業は登録の複雑さもあり、苦境にある小さな業者を救う仕組みになっていない。利用する側も、コロナ禍で本当に生活に困っている人は旅行に出られない。比較的体力のある大手の業者や、生活に困っていない人が利用するだけに終わる恐れがある」という。

自己申告の感染防止ステッカー

 対策のちぐはぐさは飲食店などにも見られる。東京都は「手洗いの徹底・マスク着用」や「体調不良の従業員は帰宅させる」などの対策を取る飲食店や遊興施設に、虹色模様の「感染防止徹底宣言ステッカー」を発行。店などが都のホームページを通じて対策項目をチェックして申請し、11日時点で17万4356施設が発行を受けた。

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