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米軍ステルス機が原因不明の墜落事故 同型機は今も日本上空を飛び、自衛隊導入へ

(2020年10月14日東京新聞に掲載)

 米軍岩国基地(山口県岩国市)に配備されている最新鋭ステルス戦闘機F35Bの同型機が、9月末に米国で墜落した事故が波紋を広げている。事故機はかつて岩国基地に所属していたことが判明。原因は不明だが、米軍は飛行を停止せず、関係自治体は早々に追加配備を容認した。F35Bは自衛隊も導入を予定している機種だが、相次ぐトラブルを受け、原因究明を求める声が高まっている。(木原育子、中沢佳子)

墜落事故あっても変わらず

 「事故が起きたって何も変わらないよ。F35Bは飛び続けている」

 13日、岩国基地の様子をフェンス外から見つめていたアマチュア写真家の戸村良人さん(74)が、最近の様子を語った。「米軍機の異変の兆候をつかむためにシャッターを押し続けているが、事故が起きても変化なし。あまりに無防備で心配だよ」

ステルス

岩国基地を離陸するF35B戦闘機=7日、山口県岩国市で(戸村良人さん提供)

 事故は、米カリフォルニア州で9月30日(現地時間29日午後4時ごろ)に発生。米海兵隊所属のF35Bが訓練中にKC130空中給油機と接触、墜落した。パイロットは脱出。給油機は緊急着陸したが、乗員は全員無事だった。

 岩国基地には、同型機のF35Bが既に16機配備されている。初配備の前の2016年には県や岩国市の配備容認表明後、米国で事故が発生していたことが分かり、容認を一時撤回した。

 今回も、事故前日の29日までに県と市はFA18戦闘攻撃機12機からF35B16機へ段階的に更新する追加配備を容認していたが、事故が発生しても撤回しなかった。

事故機はかつて岩国基地に

 国は今月6日、事故機がかつて岩国基地に配備されていたと米側から連絡を受けたと明らかにした。防衛省中国四国防衛局の藤田充孝報道官は「承知した内容を地元自治体にいち早く伝えるのはわれわれの責務だが、米国で起きた事故なので」と歯切れが悪い。

 「拙速で道理に合わない」と、市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」顧問の久米慶典さん(64)らは12日、岩国市役所に出向き、福田良彦市長あてに容認撤回などを求める要望書を提出した。

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瀬戸内海に面する米軍岩国基地。手前が滑走路で、後方に米兵の住宅、その奥に市民の住宅地が広がる(2017年12月、本社ヘリ「まなづる」 から中嶋大 撮影)

岩国で死亡事故やパイロットの手放し操縦

 岩国基地では18年12月、所属するFA18が高知県沖で夜間訓練中に空中給油機に接触し、6人が死亡する墜落事故を起こしている。

 19年には米軍がまとめた報告書で、同基地のパイロットの間で、訓練中に手放しで操縦したり読書したりするといった重大な規律違反が横行していたことが発覚した。久米さんは「空中給油のあり方に今こそメスを入れるべきだった。米軍側も国も地元住民を軽んじている」と憤る。

外務副大臣が語った「子どもの給食無料化」

 岩国市議を六期務め、現在は市民団体リムピース共同代表の田村順玄さん(75)は17年1月の市議会を忘れた日はない。

 在日米軍再編に伴う米海軍厚木基地の空母艦載機約60機の移駐を巡り、当時外務副大臣だった岸信夫防衛相らが訪れ、小中学校の給食無料化の要望に応じたことだ。

 「国が岩国の子どもたちの給食費を語るなんて。市は莫大な交付金をもらい、『はい』としか言えなくなった」

 同基地所属のF35Bは半年後には計32機に増強される予定で、県と市には今夏、国から「一部地域で騒音が増加する」と説明があった。県基地対策室の藤井将志次長は「実際に騒音が増加したら米軍にもの申す形になる」と話すが、米軍からの詳細なデータは得られていない。

 「こちら特報部」は岩国基地に取材を申し入れたが、13日夕までに返答はなかった。

事故原因は「調査中」

 今回墜落したF35Bは、なぜKC130と接触したのか。防衛省によると、米国からは事故の経緯とともに「接触原因は米海兵隊が調査している」とだけ説明があったという。

 米ロッキード・マーチン社が開発したF35には、今回事故を起こしたBの他に、空軍仕様で通常離着陸型のA、海軍仕様で空母艦載機向けのCがある。Bは海兵隊仕様で、上陸作戦で強襲揚陸艦に載せることを想定し、短距離での離陸や垂直着陸ができる。

 軍事評論家の岡部いさくさんによると、仕様によって空中給油の方法に違いはあるが、いずれも難しい操縦を必要とする。「F35は高度に自動化された機体。空中給油にはデリケートな操作を求められる。考えられるのはパイロットのミスか、乱気流の発生か…」と話す。

高難度の空中給油、激しい騒音

 軍事評論家の稲垣治さんも「給油を受ける機体は、給油機と距離と速度を一定に保って飛ぶ。簡単なようで技術が要る。特に夜間の給油は難しい」と語る。「(不測の事態に備え)戦闘機は常に一定の燃料が入った状態で飛ぶ。そのため、長距離だと1回の飛行で5、6回空中給油する。当然、夜間を想定した訓練も欠かせない」

 問題は操縦の難しさだけではない。岩国基地のF35Bが今月上旬に普天間飛行場(沖縄県)に飛来した際には、激しい騒音が引き起こされた。稲垣さんは「垂直着陸時は騒音がひどい。でも、軍隊には市民の生活環境を守るという発想はないだろう」とみる。

米監査院が指摘、「欠陥」966件

 一方、「F35には多くの欠陥があると、米国内で指摘されている。起きるべくして起きた事故だ」と機体の不具合を疑うのは、軍事問題に詳しいジャーナリストの田中稔さん。

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