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2度目の住民投票告示「大阪都構想」って東京都民には関係ない話?

(2020年10月10日東京新聞に掲載)

 大阪市を廃止し、4つの特別区に再編する「大阪都構想」の2度目の住民投票が12日に告示され、11月1日に投開票される。国内唯一の都を名乗る東京都民にしてみれば、もう1つ都ができることに何らかの関心があってもよさそうだが、今のところ完全に対岸の火事。ただ、ことは日本第2の都市圏の話、東京には関係ないで本当に済むのかどうか。探ってみた。 (木原育子、佐藤直子)

東京への対抗心か、あこがれか

 「要するに、東京への対抗心の表れなんじゃないんですかね?」

 9日、正午前のJR東京駅周辺。スポーツ関連のイベント会社に勤める神田七保海(なおみ)さん(29)=東京都世田谷区=は首をかしげた。「東京で暮らす大阪の人も大阪弁を貫き、東京に意地でも染まらない」とし、「経済力も人口規模も、大阪は東京都と同じだってことが言いたいんでしょう」と続ける。では実際、大阪都になったらどう変わると思うか。「いまいち、よくわからないんですよね」

 妹の家に遊びに行く途中の仲真由里子さん(46)は「たまにニュースでやっていたような。でも、興味なくて。まあ都民へのあこがれが大阪の人たちをあそこまで熱くしているのかな」。自身は6月に広島県福山市から江東区に引っ越してきたが、「都とか区とかのメリットってまだ感じたことないんです…」。

「大阪だけで盛り上がってんねんやな」

 地方創生について学ぶ名古屋市出身の一橋大社会学部2年の稲垣佑一さん(20)は都構想に関心を寄せる1人だ。「大阪は、東京23区のように経済的にも強い街をつくりたいのかなって思う。ただ、都構想は地域によって税収の差が大きいから始まった議論じゃなかったでしたっけ?問題は、街の格差が広がったことでしょ」と投げかける。自身は多摩市在住で「東京も、特別区にだけ大規模病院が集まっていたり交通網が発達したり、『多摩格差』は全然解消できていない。街づくりの戦略の差も激しい。大阪もそうならなければいいが」。

 大阪市大正区から東京に出張で来ていたIT企業勤務の女性(43)は苦笑いする。「大阪では『寒くなりましたね』という季節のあいさつと同じ流れで都構想の話を毎度するが、東京では当然全くない。また、大阪だけで盛り上がってんねんやなって思ってます」

「待った」をかけた北区と中央区

 一方で、実際に住民投票で大阪都構想が「賛成」多数だった場合に備えて、すでに「待った」をかけた自治体もいる。大阪市が4つの行政区に再編された際、区の名称に提示されたのは北区、中央区、淀川区、天王寺区。だが、東京都には、北区と中央区が存在している。

 旧自治省(総務省)が1970年の「同一名にならないよう十分配慮すること」との通知も出しており、中央区総務部の北沢千恵子参事は「混乱が生じる可能性も想定されるので、できる限り避けていただきたい」ときっぱり。北区総務部の雲出直子参事も「『北区』は本区唯一のものであることを希望する」と続く。

 だが、実際に業務を担う担当者は冷静でもある。北区社会福祉協議会の田中雅子係長は「すでに政令市の札幌市や名古屋市の北区と間違えて電話をかけてくる人もいる」と話し、北区選挙管理委員会の浅香光男事務局長も「東京の北区民に限って業務を行うので、影響はあまりないのでは」との見方を示す。中央区観光協会の斎藤裕文事務局長は「中央区の名前より、銀座や日本橋など個別の街の方が知名度が高い。大阪さんが使いたいならどうぞって思い」と落ち着いている。

そもそも大阪都構想って?

 大阪都構想とは、そもそも何か。松井一郎大阪市長が率いる大阪維新の会の看板政策で、府知事と市長を務めた橋下徹氏が2010年に提唱した。府と市が同じようなサービスを行う「二重行政」の解消を掲げ、人口270万人の大阪市を廃止し、東京23区のような4つの特別区に分割。市の財源と権限を大幅に府に移譲する考えだ。

 11年11月に府知事だった橋下氏が大阪市長選に、松井氏が知事選に出たダブル選で勝利すると、15年5月に1度目の住民投票が行われた。しかし当時は自民・公明が反対し、約1万票差で否決。「反対多数なら政界引退」を宣言していた橋下氏は、同年12月に市長を辞職した。

2015年5月、大阪都構想住民投票で反対多数となり記者会見する橋下徹大阪市長(左)と松井一郎大阪府知事=大阪市北区で

2015年5月、大阪都構想住民投票で反対多数となり記者会見する橋下徹大阪市長(左)と松井一郎大阪府知事=大阪市北区で

 ところが同年、維新は再挑戦を公約。昨春には当時の松井知事と吉村洋文市長がポストを入れ替わるダブル選を断行し、同時期に行われた府議選でも維新が大勝。公明が「民意を尊重する」と賛成に方針転換し、維新と組んで都構想制度案を設計して今回、2度目の住民投票に持ち込んだ。賛成多数なら25年に大阪市は解体される。共同通信が9月に実施した電話調査では、賛成49・2%、反対39・6%。報道各社の世論調査でも賛成が優勢だ。

「維新は不都合な真実を隠している」

 とはいえ、このまま維新側の思惑通りになるのか。大阪政治ウオッチャーのジャーナリスト吉富有治氏は「維新が言う都構想のメリットはあくまで可能性の話で、実現の根拠は乏しい。大阪市解体により10年で1兆1000億円の歳出削減効果、というのも疑問視されている。維新は不都合な真実を隠している」と話す。

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