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アベノミクス 自民党総裁選直前に振り返る 次政権はどうする?

(2020年9月13日東京新聞に掲載)

 歴代最長の7年8カ月に及んだ第2次安倍政権は、発足当初から経済優先の姿勢を取ってきた。経済政策「アベノミクス」で株価を上昇させてからは国政選挙にも連勝して「1強」を築いたものの、景気回復の実感を得られない中小企業は多い。コロナ禍で苦境が続く企業や労働者に本当に必要な政策とは何か。14日の自民党総裁選を前に考えた。(中山岳)

「景気が良かった実感はほとんどない」

 「安倍政権の7年8カ月間、景気が良かった実感はほとんどない。株価が上がっても恩恵は大手企業だけ。うちみたいな零細には何も関係なかったな」

 千葉市花見川区にある製造業「ヒサヤ軽金」の中村忠久会長(82)は話す。同社は発電所の設備部品やオフィスビルの間仕切りなどを生産。技術力を武器に大手メーカーなどと取引してきた。今年初めから仕事の注文が減り、コロナ禍が追い打ちをかけた。ひと月の売り上げは前年と比べて約4割落ちた。中村さんは「本当に先が見えない」と嘆く。

「安倍政権下で景気が良い実感はほとんどなかった」と語るヒサヤ軽金の中村忠久会長=千葉市花見川区で

「安倍政権下で景気が良い実感はほとんどなかった」と語るヒサヤ軽金の中村忠久会長=千葉市花見川区で

 約20人の社員のうち半数が出勤し、残りは休ませざるをえなくなった。国が企業に休業手当の一部を助成する雇用調整助成金を4月から受給しているものの、中村さんの心配は尽きない。「長期間休むと社員の意欲が落ち、技術も維持できない。一刻も早く全員で仕事ができるように戻れないと会社がだめになってしまう」

効果は中小企業までは波及していない

 安倍政権下の7年8カ月間は、韓国や中国の同業他社との価格競争は厳しくなり売り上げもなかなか伸びなかった。最近、自民党総裁選に立候補した3人の演説をテレビで見た。中村さんは「中小・零細企業への政策の話は誰もほとんどしなかった。日本経済は大企業だけじゃなく多くの中小企業が支えている。ほったらかしでいいのかね」と残念がる。

 帝国データバンクが3月に全国の約1万1300社に安倍政権の経済政策「アベノミクス」について聞いたところ、100点満点で平均59.4点。この質問は15年から毎年、企業に続けており、今回初めて60点を下回った。大企業より中小企業の評価が低い傾向で、産業データ分析課の池田直紀副主任は「アベノミクスの効果は中小企業までは波及していない」と指摘する。どうやら、中村さんのように感じている中小企業経営者は多いようだ。

「アベノミクスの恩恵なく、コロナ禍で経営が厳しい中小企業は多い」と話す曽我浩さん=千葉市花見川区で

「アベノミクスの恩恵なく、コロナ禍で経営が厳しい中小企業は多い」と話す曽我浩さん=千葉市花見川区で

 中小企業の経営者や労働者らの相談に応じる特定社会保険労務士の曽我浩さんは「業種を問わず、恩恵はなかったという声が多い。コロナ禍で観光バス、飲食、運送などでは仕事が減るなどし、経営がより厳しくなっている」と話す。

 「働き方改革を掲げたことで、中小企業の経営者の間で長時間労働を減らし、有給休暇を取らせようという意識は出てきた。ただ、今も有給休暇を十分に取れない労働者は多い。正社員を増やさず、賃金の安いパートを含めて非正規の労働者に頼る構造も変わっていない」。曽我さんはこう話し、「アベノミクスも働き方改革も、安倍晋三首相は掛け声だけで終わってしまった感じがある。新しい首相には、まずは中小企業に目を向け、雇用を守ることにも力を発揮してほしい」と続けた。

株価上昇も経済成長に結びつかず

 第2次安倍政権は一貫して経済政策「アベノミクス」に取り組んできた。その狙いは、日銀による「異次元」といわれた大規模な金融緩和で市中に流れる金の量を増やし、企業がもうかれば従業員の賃金が上がり、消費も増えてまた企業がもうかるという好循環を生むことだった。

 安倍首相は2014年の衆院解散直後に「企業が収益を上げる状況をつくり、皆さんの懐に回っていく。全国津々浦々に至るまでに景気回復を実感できる、この道しかない」と強調した。

応援演説でアベノミクスの成果を訴える安倍晋三首相=2014年12月、三重県四日市市で

応援演説でアベノミクスの成果を訴える安倍晋三首相=2014年12月、三重県四日市市で

 確かに金融緩和によって円安になり、輸出を中心に稼ぐ大企業の業績は回復し、株価は上昇した。一方、安倍政権は15年に国内総生産(GDP)について「20年ごろまでに戦後最大の名目GDP600兆円の実現を目指す」という目標を掲げたものの、19年でも554兆円と未達成のまま。名目GDP成長率をみても、10~19年の平均は1.25%にとどまる。

 「暮らしと経済研究室」を主宰する山家悠紀夫さんは「株価は上がっても経済成長はほとんどできなかった。大企業は利益を内部にため込んだだけで、労働者や中小企業に恩恵はなかった。アベノミクスが成功したとは言えない」と断じる。

大企業優先、中小・零細はおいてけぼり

 14年4月と19年10月に2回、実施された消費税増税も中小・零細企業の経営を圧迫した。山家さんは、大企業に比べて中小・零細企業の価格競争力が弱く、消費税の引き上げ分を商品価格に転嫁しづらいとし、「消費税増税が大きな負担となり、業績は上がらなかった」と話す。

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