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少子、核家族化に自粛の夏…墓参りや法要見送り、お寺は苦境

(2020年8月14日 東京新聞に掲載)

 13日は旧盆の入り。7月盆の東京でも、職場が休みになる旧盆にお墓参りする人は多い。ところが今年は新型コロナ禍。ご先祖さまの供養にも影響が出ている。その上、葬儀や法要も参列者をしぼったり、そもそも見送ったり。少子化などの影響で厳しさを増している寺院経営は今、さらなる収入減で苦境に立たされている。(木原育子、中沢佳子)

人影まばら、大きく感じるセミの声

 「おまえが旅立った後、こっちはコロナで大変だ。でも、孫と元気にやっているから心配するな」

 東京都立谷中霊園(台東区)。静岡県熱海市の野田謙一さん(80)は、3月に亡くなった妻の墓前で手を合わせていた。コロナの感染者数が多い都内に来るのは心配。それでも「55年連れ添った妻。やっぱり会いたい」と決心し、娘の運転する車でやって来た。

ほうきで掃除し、墓参りをする人たち=東京都台東区で(一部画像処理)

 例年、多くの人が訪れる霊園の様子は様変わりしていた。30度を超える暑さの中で、中央園路の桜並木を歩く人はまばら。人の声はほとんど聞こえず、セミの鳴き声が大きく感じられた。枯れた花が花瓶にささったままのお墓も多かった。周辺の寺の墓地も人はまばらだった。

 世田谷区の増田由希子さん(54)は、80代の両親の代わりに長男と次男夫婦で来た。草むしりをしながら、「今年は草が伸びているお墓も多いわね。なかなか来られないのでしょうね」と周囲を見渡した。千葉県松戸市の松本政年さん(69)は「例年は7月に親族と来る。今年は親族代表で来た。この暑さに1人でお墓の手入れをするのはこたえるね」と汗が止まらない。

レジャーあきらめ お墓なら

 両親のお墓参りに訪れた練馬区の高瀬真由美さん(43)は「子どもたちは夏休みも短く、遊びにも行けない。せめてお墓ぐらい…」と、2人のおいっ子を連れてきた。小学6年のおいっ子(12)は「本当は旅行とか行きたいけど今年は無理。お母さんも『お墓なら三密にならないから行ってよし』っていうし…」。夏のレジャーはもうあきらめたようだった。

 神奈川県横須賀市の斎藤多英さん(22)は妊娠6カ月で、外出を控えてきた。「お墓なら三密は避けられる。この子が無事に生まれますように、ご先祖さまに守ってもらおうと思って…」。3月からワーキングホリデーで来日したドイツ人のウィブケ・ブースさん(29)は「ドイツは命日には家族でお墓に行く。国の風習として祈りをささげる期間はなく、お盆は日本らしくてファンタスティック」と少し楽しそうだった。

 業者からは悲鳴が上がる。「お客さんは2、3割減ったかな」と話すのは、霊園の南入り口にある約150年の歴史がある生花店「老舗花重」4代目の中瀬いくよさん。菊やリンドウ、スターチスなど9種類の花を入れて花束を作ってきた。今夏はコロナの影響で輸入花が値上がりして8種類にしぼった。「お客さまに指摘されたら、9種類目は真心を入れたと言おうかな。今年は耐える夏です」

花と線香、代行サービスも

 茶屋「おもだかや」は花や線香を供える代行サービスをしている。5代目の市原恭子さん(73)は「申し込みは数件。案外少ない。訪れる人も少ないし、行くべきか頼むべきか迷っているのかな」と話した。

墓参りの人が使う水くみ場に掲示された新型コロナウイルス感染予防の張り紙=東京都台東区で

 「お墓を探しているの?」と話しかけてきたのは、霊園近くに住む自主ボランティアの男性(72)だ。霊園は東京ドームの敷地2.2個分の10万2000平方メートルと広大で、10年前から案内役をしている。男性は「お墓に来る人の状況? 少ないに決まっているよ。本当に寂しいもんだよ」と嘆いた。

 帰省も墓参りも自粛の夏。「新しい生活様式」でお盆を迎える動きもある。

通信アプリで法要の映像流す

 動画投稿サイトで法話を配信する。参拝できない人向けに、ズームや無料通信アプリ「LINE(ライン)」のビデオ通話機能を使い、清掃後のお墓や法要の映像を流す。そんな墓参りや法要時の「密」を防ぐ手探りが続いている。

新型コロナ禍で、動画投稿サイトに専用チャンネルを開設する寺も増えている=石川県七尾市の常福寺で

 「墓参り代行サービス」も盛況で、ふるさと納税の仕組みを活用する傾向も。仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクによると、代行サービスを返礼品にする自治体への寄付件数は、7月末時点で前年の1.4倍に伸びた。お参り前と後の写真を送付(北海道岩見沢市)、シルバー人材によるお墓の掃除(岩手県花巻市など)、石材会社のお参り代行(兵庫県加西市)などだ。

 同社の担当者は「足を運べない人にとって、お墓を大切にする手段の一つ。故郷に寄り添う、ふるさと納税の本来の趣旨にも沿う。自治体にとっても、地域の高齢者や障害者の雇用につながる」と語る。

ビデオ会議システムで仏前に

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