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10代、20代は戦争体験をどう「実感」するのか ~空襲被害者オンライン証言会から~

 戦後75年の「終戦の日」となった。高齢化した体験者の語り継ぎが限界に近づく中、継承のカギになるのが若い世代の意識だ。体験を聞きたい10代や20代がいる一方、時代の変化は、残酷さや戦後の苦労といった戦争の実相を遠ざけてきた。風化にあらがい、未来に記憶を残していくにはどうしたらいいのか。空襲被害者のオンライン証言会から、「若者と戦争体験」の現在地を探った。(安藤恭子、榊原崇仁)

Facebookで告知 参加者の半数は10~20代

 「戦争に負けた日本は、家族を失った子どもたちを邪魔者扱いし、多くが飢えや寒さで死んだ。空襲で孤児となった私も、親族の虐待を受け、働きづめにされた。少しでも国の援助や補償があったなら。もう少し違う人生を生きられたと思うと、今も悔しいんです」

 コロナ禍を機に14日に初めて企画された全国空襲被害者連絡協議会(空襲連)のオンライン証言会「空襲が変えた子どもの人生~体験者が語る 戦争と戦後~」。3歳で東京大空襲に遭い、両親と幼い妹を亡くした吉田由美子さん(79)が東京都内の法律事務所でカメラに話し掛けた。

 司会は空襲連と関わって間もない38歳の福島宏希さん。手厚い補償がある軍人・軍属と違い、民間の空襲被害者には国から経済的な援助がない。若い世代に知ってほしいと、7月に立ち上げた空襲連のツイッターやフェイスブックで告知し、国内外の約40人が参加。半数を10代と20代が占めた。

「怖くて暗い集会」→わかりやすさ心掛けて

 「チャット」というリアルタイムの書き込み機能で、参加者と対話も試みた。「お話を聞いて涙が止まりません」「対面でなくても十分伝わります」といった感想に加え、「配信がなければ参加しなかった」「戦争を知らない私たちができることを教えてください」との声も。吉田さんは「私は両親と3カ月しか生きられなかった妹の無念を代弁している。戦争は絶対やっちゃいけないと声を上げ続けて。平和のバトンを託したい」と求めた。

①空襲体験

オンライン配信で空襲体験を話す吉田由美子さん(左)と企画した福島宏希さん(中)、桐山愛音さん=東京都千代田区で

 福島さん自身、日本の侵略の歴史や戦後補償問題に関心があり、三年前に若い仲間と市民団体「history for peace(ヒストリー フォー ピース)」を発足。戦争体験者から話を聞き、戦跡を巡る活動をしてきた。

 今回は吉田さんの子ども時代に焦点を当て、資料に平易な文章を使うなど分かりやすさを心掛けた。「戦争に関わる集会というと、怖くて暗い印象がある。意見交換を嫌がる若者のハードルも高い」。証言会の最後には「#空襲被害者の終わらない戦争」というハッシュタグを付け、SNSへの感想投稿も呼び掛けた。

 配信作業を担った明治学院大3年の桐山愛音さん(20)も「体験者の証言を聞きたいという同世代はいるけれど、討論もあるというと、『知識がないから人前で話せない』と引かれてしまう。こういう場に誘うのも難しい」と明かす。

ネットで調べるより証言を聞く大切さ 実感

 戦争といえば原爆のイメージが強く、幼いころは人一倍怖かったという。「戦争を知るために広島に行く」。高校2年の時、ツイッターで衝動的に宣言し、平和記念公園を一人で訪問。平和ガイドの話を聞き、歴史と向き合う大切さを実感した。

 「ネットで戦争の事実は調べられても、その場にいた人の固有の体験や感情は分からない。でも、そうした証言にこそ本質がある」と桐山さんは思う。そして、なぜ空襲被害の補償はかなわず、調査すら行われないのかとも。

 「不条理への怒りと同時に今への危機感がある。もし戦争や原発事故のような人災が起きても、私たちはまた、皆が被害を受けたのだから仕方ないという『受忍論』で声を抑えつけられてしまうんじゃないか。過去、今、未来はつながっていて、放置してはいけない問題と思う」

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10代、20代は戦争体験をどう「実感」するのか ~空襲被害者オンライン証言会から~

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