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「なんかモヤる」だけでも話して 若い世代の自殺が大幅増<無料全文公開>

(2020年9月29日東京新聞に掲載)

 今年の夏にかけ、若い世代の自殺が例年より大幅に増加していることが早稲田大の上田路子准教授らの分析で分かった。うつなど心的症状を示す人の割合も高くなっている。コロナ禍による社会環境の激変が影響した可能性があるが、原因はまだ分からない。自殺予防に取り組む専門家は「『もやもやする』だけでも話してみて」と相談を呼びかけている。(佐藤直子)*東京新聞特報Webは通常有料ですが、本記事は無料で公開いたします。

40歳未満でひそかに増、分析で明らかに

 著名人の急逝が続く。5月に人気リアリティー番組に出演していた女子プロレスの木村花さんが会員制交流サイト(SNS)で誹謗中傷を受けた後に死去。7月に俳優の三浦春馬さん、9月に俳優の芦名星さん、俳優の竹内結子さんが自宅で亡くなった。いずれも自殺とみられ、大きな衝撃を社会に与えている。

 こうして報道される著名人の死の一方で、ひそかに若い世代の自殺が増えていることが、早稲田大の上田路子准教授(自殺予防学)らの分析から見えてきた。 

 上田氏は警察庁の自殺統計データを基に、過去3年間(2017~19年)の月別に自殺数の平均値を出し、今年の同月値と比較。

(1)40歳未満

(2)40~59歳

(3)60歳以上

の年代別でみると、緊急事態宣言解除後の7月ごろから40歳未満が他の年代に比べて増加傾向が目立つという。

緊急事態宣言の解除後、女性と学生が突出

 特に女性は7月の平均値が142人なのに対し、今年は179人で25%増。8月は平均値137人に対し、今年は193人と40%増

 学生も6月以降は男女とも例年より増加し、8月は男女全体が平均値62人に対し、今年は114人で81%増。男子は44人から65人で47%増、女子は18人から49人で162%増だった。

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 上田氏は「母数が少ないと少し増えても増加率が大きくなるので注意してみる必要があるが、それでも40歳未満の女性や学生たちの増加は突出している」と分析。「原因はまだわからないが、何かがあったとみるべきだ」と話す。

 自殺の多さを安易に結び付けるべきではないが、コロナ禍が社会環境を激変させたのは事実で、影響を疑わざるを得ない。上田氏は4月からコロナ禍の人々の精神状態を知るため、毎月一般市民1000人を対象にネットアンケートを行っている。

 40歳未満は他の年代に比べ、男女とも30%以上の高い割合でうつなどの症状を見せているという。「さらに調査では、収入減などの変化があったかと質問しているが、『変化があった』と答えたのは男性が18%に対し、女性は30%。女性に強く経済的ダメージがあったことを示す」と上田氏は話す。

もやもや

自殺者の傾向を分析した早稲田大の上田路子准教授

つらいときは「どんなことでも話してみて」

 実際にコロナ禍でつらさを抱えている人の相談は増えている。年中無休24時間でチャットによる相談を行うNPO「あなたのいばしょ」の大空幸星代表によると、3月の開設から1万件以上の相談が寄せられた。相談者の多くは若い世代で配偶者や親によるDVや虐待、友人関係、仕事や子育てなどの悩みのほか、著名人の死に影響を受けたとみられる相談が相次ぐ。

 竹内さんの死が報じられた後は、「なぜ自分は死ねないのか」「突発的に死を選んでしまいそう」「同じ主婦として母として悲しい」などと語る相談が50件以上あったという。

 大空さんは「みんなギリギリまでつらさに耐えているので、ささいな出来事でも心の均衡は崩れてしまう。それでもだれかにつながりたいと、いちるの望みをかけて相談してくるのだと思う。生きることがつらいのは間違いない。どんなことでもいい、『もやもやしている』というだけでもまずは話してほしい」と語った。

◆相談窓口

・自殺予防「いのちの電話」
 0570-783-556(午前10時~午後10時)
 0120-783-556(フリーダイヤル、毎月10日午前8時~翌日午前8時)

全国のいのちの電話一覧(一般社団法人「日本いのちの電話連盟」)

いのち支える相談窓口一覧(自殺総合対策推進センター)

・こころの健康相談統一ダイヤル
 0570-064-556(曜日、時間は都道府県により異なる)

都道府県・政令指定都市の相談窓口(厚生労働省)


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