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法曹養成の制度改革で学生の負担増加…コロナ禍で遠い司法試験

(2020年10月11日東京新聞に掲載)

 新型コロナウイルス禍で家計が悪化し、学費の工面に苦労する学生が少なくない。その中には、弁護士、検察官、裁判官の法曹3者を志して勉強に励みつつ、学費を稼ぐためアルバイトに駆け回る若者もいる。近年の法曹養成を巡る制度改革で経済的事情を抱える人の負担は重くなったといい、「奨学金制度の見直しなど、支援の在り方を考えるべきだ」と指摘する声がある。 (中沢佳子)

コロナ禍でバイト収入減…勉強時間を削って

 「何をするにもお金のことで苦労する。法科大学院に行く余裕はないから予備試験突破を目指していて、対策予備校に通う費用をためるためにバイトを掛け持ちしている」。学校現場の問題に法的な助言をする弁護士「スクールロイヤー」が夢という、兵庫県立大3年の女子学生(21)がため息をつく。

 母子家庭に育ち、高校生の妹は大学進学を考えている。お金のことで甘えられない。家賃以外の生活費や学費、予備校費用をバイトで賄おうと、塾講師、家庭教師のほか、飲食店とホテルでバイトし、収入は月10万円。食費を切り詰めて月3万円程度で生活し、いったん母に出してもらった大学の学費を少しずつ返しながら、貯金している。

 ところが新型コロナのあおりで、バイトはオンラインで続けている家庭教師だけになった。収入は月3、4万円に減り、貯金を切り崩している。「コロナ前ほど稼ごうとすると働きづめになる。1日5~6時間は勉強したいのに、日によっては3時間ぐらいになる」

重い予備校費用と厳しい奨学金制度基準

 もともと教員志望。在籍しているのも法学部ではない。2年生の時、罪を犯した少年の更生支援などに携わる弁護士の話を大学の授業で聞き、自分のやりたいことに近いと考えた。通っている大学には法学部がなく、他大学に入り直すのも金銭的に無理。険しい道と承知で、他学部から司法試験に挑むことにした。バイトの傍ら、法律の入門書やオンライン指導などで勉強している。

 予備校費用は年120万~200万円ほどかかる。「いろんな奨学金制度はあるけど、支給対象の世帯収入基準がとても低い。少しでも超えると、どんなに家計が苦しくても対象外。私もそうだった。少額、それこそ月1万円でもいい。対象を広げてくれれば助かる人は多いのに」

司法試験の合格発表を見る受験生ら=2015年9月、東京・霞が関で

司法試験の合格発表を見る受験生ら=2015年9月、東京・霞が関で

 同じく弁護士志望の慶応大2年の男子学生(23)も、他学部に在籍しながら予備試験突破を目指している。しかし、コロナ禍で家業の英語塾は自転車操業状態。勉強を続けるお金を用意できるか不安だ。「受験予備校に行くお金もない。今はオンライン指導を中心に1日8時間ぐらい勉強している」

 弁護士を目指すようになったのは、英語塾の家賃交渉がきっかけだ。コロナの影響で対面指導ができず数カ月休業することになり、教室として借りていたビル1室の家賃の減額を大家に打診。1度は断られたが、ネットで調べた不動産契約にまつわる法律と民法の知識を基に交渉し、何とか応じてもらえた。「法律の知識がなくて損をする人は、たくさんいるはず。法律関係で困っている人や中小企業が気軽に相談できるようにしたい」

経済的に苦しい学生がコロナで顕在化

 新型コロナの影響で、学ぶのも立ちゆかなくなった若者は少なくない。学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」が4月、大学生ら1200人に行った調査で回答者の68.3%が、バイト収入が「減った」「ゼロになった」と答え、親の収入が「減った」「なくなった」も54.1%。退学の検討や決意をした人は20.5%に上った。自由記述欄には「親の会社が倒産しそう」「借金が膨らむくらいなら退学したい」など切実な声がつづられた。

 「コロナ前から増えつつあった経済的に苦しい学生は、コロナで顕在化した。うちにも『親がリストラに遭った』『家業の飲食店が傾いた』という受講生がいる」。資格試験のオンライン指導を手掛ける「サイトビジット」の佐藤郁夫・資格スクエア事業部責任者が打ち明ける。

「経済的に苦しい学生はコロナで顕在化した」と話す佐藤郁夫さん=東京都千代田区で

「経済的に苦しい学生はコロナで顕在化した」と話す佐藤郁夫さん=東京都千代田区で

 同社は5月、法曹を志す苦学生向けの支援制度を設けた。10人に来年5月まで月5万円を支給し、約80万円の予備試験対策オンライン講座を2年間無料で提供する。「熱意を持った若者がプロとして活躍すれば、社会がいい方向に進む」と佐藤さんは意義を語る。

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法曹養成の制度改革で学生の負担増加…コロナ禍で遠い司法試験

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