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日本船の重油流出事故で、同じ島国の日本がモーリシャスの美しい海を戻すためにできること

(2020年8月18日東京新聞に掲載)

 日本から約1万キロ離れたインド洋の島国、モーリシャスが大騒ぎになっている。日本の貨物船が座礁し、燃料の重油が流出したのだ。環境破壊はもちろん、住民の健康もおびやかしかねない危険物。日本も1997年のナホトカ号事故をはじめ、重油で何度も痛い思いをしている。何より今回は「加害国」。支援の手だてはないのか。(中沢佳子、佐藤直子)

「インド洋の貴婦人」

 「モーリシャスの皆さまに大変ご迷惑をかけ、申し訳ない。流出油の回収、環境汚染の影響を最大限に抑えるべく全力で取り組む」

 インド洋の島国モーリシャス沖で起きた貨物船の重油流出で、船を保有管理する長鋪汽船(岡山県)の長鋪慶明社長は13日、陳謝とともに、法に基づいて賠償に応じる考えも示した。

 平謝りも当然だ。面積がほぼ東京都と同じ2040平方キロ、人口約126万5千人の島国モーリシャスは美しい自然で知られ、「インド洋の貴婦人」「天国のモデル」と称される。

 特に事故現場近くのサンゴ礁が広がる海は透明度が高く、リゾートホテルが立ち並ぶエリアになっている。主要産業が観光の同国は、新型コロナウイルスの影響で減った外国人観光客を呼び戻そうとしていた。

事故の経緯

 事故は7月25日夜(現地時間)に発生した。貨物船は中国からシンガポール経由でブラジル方面に向かう途中、サンゴ礁のある浅瀬で座礁。悪天候で離礁作業がはかどらず、8月6日朝、燃料の重油約3千8百トンと軽油約2百トンのうち、約1000トンが燃料タンクの亀裂から流れ出た。そして船体は完全に二つに割れた。

 座礁した船は全長299・5メートルでパナマ船籍。乗員はフィリピン人ら計20人。商船三井がブラジルから鉄鉱石を運ぶため長鋪汽船の関連会社から借りた。

 地元では、乗員が地元警察の調べに「Wi―Fiに接続してインターネットを使うため、島の近くを航行した」と話したと報じられている。乗員の誕生日会を開いていたとの話もある

 本当なら信じ難い話だが、過去にもあぜんとする理由で事故を起こした船はある。例えば2012年1月、イタリア中部ジリオ島付近の浅瀬で豪華客船が岩礁にぶつかり、乗客乗員32人が死亡。地元紙は「船長が同島出身の給仕長に島を見せようと、島に接近した」と報じた。

 今回は死者こそ出なかったものの、モーリシャス史上最悪の環境災害と言われている。モーリシャス政府は環境上の緊急事態宣言を出し、国連などに支援を求めた。長鋪汽船や保険組合に環境汚染の損害賠償を請求する方針も示している。

 日本政府も国際緊急援助隊6人を派遣し、12日から国連などと連携して活動している。隊の報告では、油は座礁場所から約10キロに流れ、マングローブ林にも入り込んだ。こびりついた油の除去は難しく、薬剤を使うと生態系を壊す可能性があるという。

 住民の健康への影響も心配される。油に含まれる有害物質の成分が呼吸や肌を通じて体に入ると、頭痛やめまい、吐き気、呼吸困難などを招くとされる。過去の重油流出事故では、油を回収していた人が死亡したこともある。

 現地では海岸に流れ着いた黒褐色の重油を、住民がスコップや特産のサトウキビの葉の束でかき集めている。ただ、防護用のマスクや手袋が不足しており、呼吸が苦しくなったり、せき込んだりするなど体調を崩す人が続出。政府が除去作業は専門家に任せるよう呼び掛けている。

日本でも何度も重油流出事故

 日本国内でも重大な重油流出事故は起きている。その一つが、1997年1月、島根県の隠岐島沖の日本海で沈没したロシア船籍タンカー「ナホトカ号」から6240キロリットルもの重油が流出した事故だ。

 洋上で回収しきれず、船首部分が福井県三国町(現坂井市)に漂着。海水を取り込んでムース状になった油の塊で海岸は真っ黒になった。さらに油は、東北から山陰地方にかけての日本海沿岸に流れ着いた。

モーリシャス

ナホトカ号の事故で重油の回収作業をする高齢の地元住民やボランティアら=1997年、福井県三国町(現坂井市)

 黒い油にまみれた水鳥の姿が報じられると、ボランティアが冬の海に駆けつけた。重油をひしゃくですくい上げ、バケツリレーで運んだ。そんな人海戦術の陰で、住民やボランティアが亡くなる二次被害も出た。

美しい海を取り戻すには

 四半世紀前のナホトカ号事故では、どうやって美しい海を取り戻したのか。

 当時、石川県水産課の担当職員だった北陸先端科学技術大学院大の敷田麻実教授(資源戦略論)は、県庁に開設されたばかりのインターネット回線を使い、イギリスなど海外の事故例を集めた。

 それにより、油が固形化すると扱いにくくなることや、揮発成分が消えると毒性も減少することが分かった。「沿岸漂着油回収指針」をまとめ、行政の垣根を越えて市町村の指導にあたった。

教訓 パニックにならない

 反省点もある。事故直後は、漂着した油の回収を急いだ。海岸の環境が重大な影響を受けると考えたからだった。しかし、悪天候を押して作業したこともあり、資材や人材を効率的に使えなかった面があった。そんなことから学んだ教訓が、「パニックにならないこと」だった。

教訓 自然の力と海を守る意識

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日本船の重油流出事故で、同じ島国の日本がモーリシャスの美しい海を戻すためにできること

東京新聞 特報Web

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