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通話× 地図閲覧× どこまで規制?「ながらスマホ」禁止条例

 日常生活に欠かせないスマートフォン。四六時中、画面を触っているという人も少なくないだろう。便利な一方、歩行中に画面に集中しすぎて人とぶつかるといったトラブルが絶えず、東京都足立区は「ながらスマホ」の禁止条例を施行した。ただ、この条例、現状では通話や地図アプリの使用なども認めないとされ、「厳し過ぎる」との声も上がる。ながらスマホはどこまで規制すべきなのか。(榊原崇仁、安藤恭子)

新たな規制に戸惑い

 商業施設や飲食店が立ち並び、鉄道5路線が乗り入れる北千住駅周辺。足立区随一の繁華街を12日に訪れると、「ながらスマホ」はあちこちで見られた。

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スマホを見ながら横断歩道を渡る人たち=東京都足立区で


 駅のホームでは、電車を降りた年配の女性が電話をかけ始め、そのままエスカレーターに向かった。若い男性はスマホの画面を見ながら駅の出口へ。交差点では、赤信号で立ち止まった際にスマホを触りだし、青信号に変わっても操作をやめずに歩を進める人が目立った。

 江東区の女子高校生(16)は友人との待ち合わせ場所が分からず、スマホでメッセージを交わしながら駅周辺を歩き回っていた。条例について水を向けると「全然知らなくて」と頭を下げた。条例の存在を知らないのは区民も同じ。飲食店の開店準備をしていた安室ミナ子さん(74)は「どんな内容ですか」と逆質問した。

 新たな規制に戸惑う人は少なくない。花店の男性(50)は「何が駄目か、線引きが難しそう。カーナビを見ながら車を運転するのはいいわけでしょ」と語る。仕事で訪れた埼玉県越谷市の男性会社員(38)は「慣れない場所に来たらスマホで地図を見ながら歩く。それも駄目ですか。紙の地図も同じだと思うけど」と話す。

 先月13日に施行された条例は、「ながらスマホ」を「スマホ等を操作し、または画面を注視しながら歩行することまたは自転車に乗ること」と定義し、公共の場所で行ってはならないとしている。

 条例は自民党会派から議員提案された。提案者の一人、古性重則区議は「車を運転していた時、スマホを触る若者の自転車が信号無視をし、ひきそうになった。事故が起きてはいけないと思い、条例化を考えた」と振り返る。

守れないなら罰則規定も?

 条例に明記はされていないものの、古性氏は通話しながらの移動や地図を見ることも禁止と説明。音楽を聴くためにスマホを操作するのも「移動中は控えてほしい。そもそもイヤホンで両耳がふさがっていると、周りの音が聞こえず危ない」と訴える。

 「まずはチラシなどを使って周知し、その後は路上での注意も想定している」と古性氏。罰則規定はなく「あくまで『ながらスマホはやめよう』という注意喚起。条例を守ってもらえないようなら、罰則の新設を議論することもあり得る」と唱える。

 慎重論もある。額賀和子区議(共産)は「何をやっちゃいけないか曖昧なままで、議論が不十分」と批判。区交通対策課の長沢友也課長は「『ながら』に該当する行為を整理しているところ。条例を周知するため、9月にチラシの配布を始めたい」と述べた。

相次ぐ事故やトラブル

 神奈川県大和市も先月1日、「歩きスマホ防止条例」を施行した。こちらも罰則規定はなく、道路や公園など公共の場でスマホを操作するときは、通行を妨げず、立ち止まって行うよう定めている。

 市が1月に小田急江ノ島線中央林間駅などで通行人約6000人を対象に調査したところ、約12%が歩きスマホをしていた。市道路安全対策課の安見昌幸課長は「『スマホは立ち止まって操作』との意識啓発が重要と考えた。コロナ禍でチラシ配りやイベントが難しく、駅頭などで音声を流して条例を周知している」と話す。

 昨年の総務省の調査で、スマホの所有世帯は8割を超え、個人でも67%に達した。普及に伴い、ながらスマホによる事故やトラブルが相次いでいる。

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男子中学生が電車とホームの間に挟まれて死亡した東静岡駅=2018年7月、静岡市葵区で

 2017年に川崎市で当時20歳の女子大学生が自転車で歩行者の高齢女性に衝突し、死亡させる事故が起きた。女子大学生は飲み物を持った右手でハンドルを握り、左手はスマホでメッセージを送受信しながら運転していた。重過失致死罪に問われ、禁錮2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡された。

 18年には静岡市葵区のJR東静岡駅で男子中学生=当時(14)=が電車とホームの間に挟まれ死亡。防犯カメラには、スマホを見ながら歩き、ホームで足を踏み外す中学生の姿が映っていた。

 東京消防庁管内で18年までの5年間に、ながらスマホによる事故で救急搬送されたのは201人。段差に気付かず転んだり、駅のホームから転落する事例が目立った。

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