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無音プロ野球 どう戦う?どう楽しむ?

(2020年6月20日東京新聞に掲載)

 新型コロナで延期になっていたプロ野球が19日、3カ月遅れの開幕を迎えた。感染防止対策で当面、観客は入れず、歓声も鳴り物もゴム風船飛ばしもない。いわば異例の「無音試合」だ。選手はいかに戦い、ファンはいかに楽しめばいいのか。新しい魅力は見つかるのか。 (安藤恭子、佐藤直子)

雰囲気の再現に苦心

 19日午後6時、セ・パ両リーグが開幕。例年と違うのはファンの歓声が響かないことだ。その球場を盛り上げようと、各球団が苦心している。

 「頑張れ!スワローズ!」「コロナに打ち勝とう!」。中日との開幕戦に向け、ヤクルトは神宮球場の観客席に八百体の応援ボードを並べた。イニング間にはファンの応援動画を球場内で流す。「無観客であっても、ファンも一緒に戦っているという雰囲気が選手に伝われば、と準備してきた。7回には応援で歌う東京音頭も流す。ただ、あいにくの雨で…」。広報担当者はやきもきしていた。

 東京ドームに阪神を迎える巨人は、録音した応援団の音をスピーカーで流す。

外野芝生エリアに敷き詰められた1・2メートル四方の応援フラッグ=所沢市のメットライフドームで

外野芝生エリアに敷き詰められた1・2メートル四方の応援フラッグ=所沢市のメットライフドームで

 京セラドーム大阪で開幕戦を迎えるオリックスは観客席に公式マスコット「バファローブル」などの人形を一席おきに並べた。イニング間にはファン50人の収録動画も用意した。

 攻撃中は打席への登場曲を除き、原則無音とする。「球音が感じられる良さはあるが、球場で応援のトランペットが鳴らないのはやはり寂しい」(水田真オリックス・バファローズイベント・運営グループ長)

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無観客試合を盛り上げるため、スタンドに並べられた、ファンから募集した約5000枚の横浜DeNAベイスターズの写真パネル=19日、横浜スタジアムで(神代雅夫撮影)

歓声も罵声も善しあし

 勝手が違う静かな球場。選手にどう影響するのか。

 「無観客も善しあしなんですよね」と、プロ野球解説者の江本孟紀氏は語る。熱狂的なファンで知られる阪神に投手として6シーズン在籍した。「活躍していればファンの声援は気持ち良いけど、エラーでもすれば、このアホ、ボケ、と罵声も浴びる。プロである以上、プレッシャーや観客の有無にかかわらず、結果を残すことが求められる」

 では、ファンにとって無音はどうか。歓声がなければ、選手の声までお茶の間に届くかもしれない。江本氏は「見る側からすれば、選手の息遣いや表情に集中できていいんじゃないかな。正直、相手チームへのやじは、聞くにたえないが」と苦笑した。

無観客試合のためシャッターが閉じられたままの入場ゲート=東京都文京区の東京ドームで

無観客試合のためシャッターが閉じられたままの入場ゲート=東京都文京区の東京ドームで 

 江本氏は東京ドームの開幕戦のラジオ中継で解説を務めた。試合前に監督や選手への囲み取材ができず、勝手が違う開幕だという。江本氏は「球場での動線が制限され、選手らと接触しないよう言われている。試合を見ながらの解説はぶっつけ本番」と語った。

 やはり阪神で活躍したスポーツキャスターの亀山努氏は「やじも声援もない無音試合というのは、耳が使える分、野球が簡単になる」と指摘する。歓声が大きいと外野を守る選手同士の声は聞こえづらく、接触の危険が高まる。無音ならその心配が少なくなる。打音がバットの芯を捉えているかどうかで、飛ぶ距離や方向を予測して守ることもできるという。

 ただ、無音の試合が続くことで、選手たちの緊張感が途切れないか心配する。「今シーズンは過密日程。ファンに見られているという意識が、疲労がたまった選手を鼓舞してくれる。ファンも、リモート観戦では球場のライブ感は味わえない。長い目で見れば、プロ野球の魅力は損なわれていく」と亀山氏は危ぶむ。

意気込むラジオ局

 無音試合をどう中継するのか。とりわけ音が頼りのラジオが気になる。

 「これまでは球場の雰囲気を含めて試合を伝えてきた。今季は違う。無観客だからこそ聞こえるプレーの音に集中して届けたい」。西武の試合を「文化放送ライオンズナイター」で毎年中継してきた文化放送(東京)の衣笠聖也編成部長は意気込む。

 ピッチャーが投げてドスンとキャッチャーミットに吸い込まれる音。カーンという打撃音…。「大歓声や鳴り物でかき消されてしまってきた音を、技術を駆使して際立たせる。リスナーは自分が球場でプレーをしているような臨場感を味わえるはずだ」と自信をのぞかせてPR。「イヤホンで聴くのがおススメです」

内野席に掲出された、A3判のファンのメッセージボード=所沢市のメットライフドームで

内野席に掲出された、A3判のファンのメッセージボード=所沢市のメットライフドームで 

オンライン活用し応援

 ファンや応援団はどう楽しむのか。

 名古屋市出身で今は東京に住むフリーライターの大山くまおさんは子どものころから中日の熱狂的ファン。「球場は選手を見るだけでなく、雰囲気すべてが好き。名古屋では中日の二軍が使う球場にも通っていたし、神宮球場なら夜風、東京ドームなら空調完備したスタンドから見下ろす風景、売り子さん…。今季は球場で楽しめなくなったのは痛恨だ」

 大山さんは嘆きつつも「受け身で待つよりも、新しい応援様式を球団もメディアもファンも作っていこう」と提案する。スマホ、ネットの活用だ。

 「これまで外野席に陣取って、歌ったり踊ったりしていたと思う。今度は自宅で観戦しながらそれをやり、撮影して動画で流す。テレビドラマをリアルタイムでみながら『#(ハッシュタグ)』をつけて感想などをツイートするのがはやり。それにならって『#ドラゴンズ』をつけてツイートすれば、自宅にいながらみんなで応援している気分になれるかも」

 野球ファンが通う居酒屋「あぶさん」(東京・四谷)では一台のテレビで、各地の開幕試合を観戦した。4月以降は営業自粛もあったが、開幕日はにぎやかになった。店長の石井和夫さんは「12球団のファンがいるから少しずつチャンネルを変えて。球場に観客が入れない分、お客が集まるのだと思うけど、とにかくみんなで集まって野球を見られるのがうれしい」。

「浩二コール」「掛布コール」から広まる

 無観客だった大相撲では、力士のぶつかり合う音など、新しい魅力が見つかった。プロ野球はどうか。

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