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結局進まなかった「女性活躍」 世界に取り残される現状と新政権の真剣度

 成長戦略の柱として安倍政権が掲げた「女性活躍」が思うような成果を上げられていない。2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にするとの目標は先送りされ、男女格差の国際指標も最低ランクに落ち込んだ。16日に発足する見通しの新政権はどこまで真剣に取り組む覚悟があるのか。従来のままなら、世界の中でますます取り残されていくことになる。(佐藤直子、榊原崇仁)

掛け声ばかりだった「推進法」

「保育所は社会のインフラとして十分な数が整備されるべきなのに、そうはなっていなかった。女性活躍なんてむなしい掛け声」。東京都内の女性会社員(42)は憤る。

 妊娠中に住んでいた都心の区は、認可保育所に子どもを入れにくい「激戦区」。預け先が見つからない最悪の事態を想定し、多摩地区に引っ越した。現在、長男(2つ)は認可保育所に通い、職場復帰できたものの、引っ越しに伴う金銭的、精神的負担は大きかった。

 政府は2014年10月、「すべての女性が輝く社会づくり本部」を設置し、女性の活躍推進を最重要課題として取り組む姿勢を示した。15年8月には、採用や昇進を平等に行うことなどを国や自治体、企業などに求めた女性活躍推進法が成立した。

 ただ、掛け声中心で現実が伴っていない状況が続いている。例えば、待機児童対策。「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は「待機児童をゼロにしようと数合わせを優先した結果、粗製乱造となり、行政の監督がきちんと及ばない保育施設もできた」と指摘する。

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自民党女性活躍推進本部の活動方針などについて記者会見する上川陽子本部長(当時)(左)ら=2014年10月、国会で

「仕事も家庭も」女性ばかりに言われても…

 安倍晋三首相は今年7月、同本部の会合で「(第2次)安倍内閣の発足以来7年間で、新たに330万人を超える女性が就業した」と成果を強調した。しかし、総務省の労働力調査によると、昨年6月時点の女性の就業者3000万人のうち非正規の割合は55%。23%の男性の倍以上だった。

 女性が活躍するには家庭での負担を減らすのが前提なのに、そちらの施策もうまく進んでいるとは言い難い。20年に13%としていた男性の育休取得率は19年10月時点で7・5%。3人の子を育てている「みらい子育て全国ネットワーク」の天野妙代表(45)は「男性が育休を取りやすい環境づくりを本気になって進めないとこの国は持たないのに、いまだ啓発レベルにとどまっている。女性ばかり仕事も家庭も頑張れと求められても、皆もう、いっぱいいっぱい」と吐露する。

「女性活躍」ではなく「女性活用」だった

 2003年の小泉政権時に定められた「社会のあらゆる分野で20年までに、指導的立場にいる女性の割合を3割にする」との目標は達成できず、「20年代の可能な限り早い時期に」と改められる見込みだ。実際、内閣府が19年にまとめた調査によると、課長相当職以上などの女性の割合は14・8%にとどまり、上場企業の役員も5・2%しかいなかった。

 労働経済ジャーナリストの小林美希さんは「賃金が低い保育や介護、サービスなどの業種で働いているのは女性が中心。非正規が多く、経済的に自立して生きられない。女性は使い捨ての駒のようで、安倍政権が進めたのは『女性活用』でしかない」と断じた。

永田町もいまだに「政治は男のもの」

 女性が活躍できていないのは国の中枢も同じ。8日に告示された自民党総裁選で、出馬に意欲を見せていた野田聖子元総務相や稲田朋美幹事長代行は見送り、立ったのは男性3人だった。過去を振り返っても総裁選に出た女性は、2008年の小池百合子・東京都知事(当時は衆院議員)しかいない。

 女性にとってハードルが高い理由を政治ジャーナリストの藤本順一さんは、立候補に必要な20人の賛同者を集めにくい状況があると解説する。「永田町は男社会。『政治は男のもの』という意識が強い。残念なことに女性議員はまだ『飾り物』『集票のための存在』と受け止められている」

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