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本紙コラムニスト7人から 安倍首相へ「本音の」送辞

(2020年8月29日東京新聞に掲載)

 安倍晋三首相が28日、辞任の意向を表明した。第1次政権と同じく病気の悪化が理由だ。政権の問題点を厳しく追及してきた「こちら特報部」といえども、「お大事に」という気持ちはあるが、当然ながらそれだけでこの政権の終わりに臨むわけにはいかない。憲政史上最長政権にふさわしい特別紙面として、特報面「本音のコラム」の筆者7人全員による「首相への送辞」をお伝えする。(佐藤直子、安藤恭子)

官邸官僚も一掃されるべき-前川喜平

 まずは、執筆陣の中でも最も安倍首相本人に近いところにいた現代教育行政研究会代表前川喜平さん。2016年6月からの約7カ月間、安倍政権下で文部科学事務次官を務めた。「高校生のための奨学給付金制度やフリースクール支援制度など、首相にも評価できる政策があった」という。だが、「加計学園の獣医学部新設など、途中から万能感が出てきた。『えこひいきもこのぐらいならいいか』と。国政の私物化が腐敗につながった

安倍首相が辞任の意向を示したことを伝える大型モニター=28日、東京都千代田区で

安倍首相が辞任の意向を示したことを伝える大型モニター=28日、東京都千代田区で

 前川さんが許しがたいのは道徳の教科化だ。「徳目を押しつけ、国にとって都合のいい人間づくりを目指す。子ども1人1人の個性を輝かせるのではなく、全体のための自己犠牲や責任義務ばかり強調する。これはやるべきではなかった」

 首相が辞めるだけではなく取り巻く官邸官僚も一掃されるべきだと言う。「非常に頭の回る官邸官僚がいる。彼らも一緒に辞めるのかどうか、これが日本の政治が変わるかどうか、一つのリトマス試験紙になる。彼らが残るなら、腐敗した構造は温存されるだけだ」

一強の元ではここまで劣化する-斎藤美奈子

 いつも通り辛口に斬ったのは文芸評論家斎藤美奈子さん。「これまでお辞めになるタイミングは何度もあったのに、ゴマ化しやウソや強弁でここまで引っ張ったのは、ある意味ご立派でした」と皮肉を交えて、受け止める。

 安全保障政策の変更、政治の私物化、それに公文書の改ざんまでやる官僚組織の忖度(そんたく)体質…。安倍政権を象徴する出来事を挙げ、「この7年半で壊れたものは多すぎますが、おかげで一強政治のもとでは、ここまで政治や組織は劣化するのだと、身をもって示してくださったのは、安倍政権の功績でしょう」。

 これからの主権者に問われているのは、「失われた民主主義の原理原則をどうやって回復するか」であるという。「首相におかれましても、体調が回復された暁には、在任中、ウヤムヤになっていた案件をこのまま葬り去ることなく、後世のために説明責任を果たしていただけるようお願いします」

平和憲法守った国民の力-鎌田慧

 ルポライターの鎌田慧さんは、安倍首相が連続在任日数の歴代最長記録を更新した直後の辞意表明に「記録はおめでとうございます。でも考えてみると、他に何をやったのか。功績が思いつかない」と首をかしげ、「政治家の3代目として生まれ、庶民をどう幸せにするか、ということを最後まで学べなかったように見えるのは残念だ」。

6月、国会閉会に抗議し、会期延長を求める人たち。安倍首相は国会審議から逃げたまま職を去る=東京・永田町で

6月、国会閉会に抗議し、会期延長を求める人たち。安倍首相は国会審議から逃げたまま職を去る=東京・永田町で

 それは安倍首相の最大の念願だった「改憲」に表れている。「権力を縛る憲法を破ろうというのは、議会制民主主義の根本である法治主義を捨てる姿勢だった。国会の圧倒的多数を占める強い政権でありながら、それでも改憲は達成できなかった。平和憲法を支持する国民の力を思い知ったことだろう。日本の政治の空白期間は、7年余りに及んだ。首相は健康で静かな余生をお過ごしください」

倫理のタガはずした負の遺産-宮子あずさ

 病院での勤務中に「こちら特報部」からの電話で知った看護師宮子あずささんは「え!」と絶句。だが、すぐさま「いま広がるのは、暴言やヘイトにあふれた社会。インターネットでもみんな一呼吸置いて気持ちを語れず、人の暗部がダダ漏れ。それは倫理のたががはずれた安倍政権と結びついている」と断じた。

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