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人事で強権ふるい官僚は委縮…「令和おじさん」菅義偉氏の危うさ

 事実上、次の首相を決める自民党総裁選が8日に告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長が立候補した。が、5派閥の支援を受ける菅長官の優位は揺るぎようもない。早くもどれほどの支持を集めるかが注目されている。それでいいのか。安倍晋三首相のコピーのような政策、地方からのたたき上げを強調する裏でのこわもて。菅長官の危うさを探る。(大平樹、大野孝志)

ふるさと納税導入で自治体が混乱

 公式ホームページなどによると菅長官は1948年、秋田県雄勝町(現湯沢市)生まれ。高卒後に上京し、法政大を卒業した後、衆院議員秘書を経て横浜市議。96年の衆院選で初当選した。横浜市西区などを選挙区とする神奈川2区選出で、現在8期目になる。


 8日に党本部で行われた総裁選の演説会では、「地方政治に携わる中で、地方分権を進めないといけない思いで国政を目指した」と訴え、たたき上げを前面に押し出した。その割には、ふるさと納税の導入を進め、自治体を混乱させた。

泉佐野市の返礼品めぐり最高裁で敗訴


 都市と地方の財政格差を解消するのが狙いの一つだが、寄付集めの返礼品競争が過熱。肉や酒といった特産品にとどまらず、アマゾンのギフト券も登場するなど混乱を招いた。国はブレーキをかけようとし、言うことを聞かなかった大阪府泉佐野市を制度から除外。逆に市から訴えられ、最高裁で敗訴する始末だった。

 総裁選を巡っては、「自助、共助、公助」発言も話題になった。2日の総裁選出馬会見で述べた。まずは国民に「自分でできることは自分でやってみる」と「自助」を求めたものだ。どうやら、困っている人には、あまり手を差し出したくないようだ。

自民党総裁選が告示され、所見発表演説する菅義偉官房長官

自民党総裁選が告示され、所見発表演説する菅義偉官房長官

雪国出身「苦労人」のイメージだが


 そんな人だが、テレビではしばしば「雪国出身の苦労人」「令和おじさん」などと、親しみやすそうなイメージで取り上げられる。だが、菅長官がかつて務めた総務相は、テレビ局を所管。そのためか、テレビ局への圧力が取り沙汰されたこともある。


 2015年5月の衆院本会議。野党議員がテレビ朝日のニュース番組「報道ステーション」への圧力を問いただした。菅長官は「一切ございません」「テレビ朝日もそう言っている」と否定した。

「圧力のかけ方が重層的」

 この一件は、元経済産業省官僚の古賀茂明さんが、番組のコメンテーターを降板したことを受けたものだった。古賀さんは、発言が官邸に問題視され、菅氏の名前を出して「圧力があった」と番組で述べていた。


 その古賀さん本人は「圧力のかけ方が重層的だった」と振り返る。菅長官が番記者を通じて不快感が局に伝わるようにしたり、秘書官が番組スタッフに内容へのクレームを入れたり。そんなことがあったという。

 民主党政権でも報道への圧力はあったと古賀さんは語る。しかし、古賀さんは「局の上層部を押さえることで現場が抵抗できないようにしている」と安倍政権の手法の特徴を指摘する。

安倍政権のメディア支配の手法をすでに駆使

 「党員投票をしないことや安倍政権の功罪を批判する番組がほとんどない。後継である菅長官ににらまれることになるからだ。政権の支持率が上がっているのは、辞任する安倍首相への同情ばかりではない。批判的な報道がなくなれば上がるに決まっている」。菅長官は安倍政権のメディア支配の手法を既に駆使していると、古賀さんは推測する。

「異次元の緩和」継続で次世代への負担は?

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菅義偉官房長官(中央)が自民党総裁選への出馬を表明し、選挙戦は既に出馬を決めている岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長との三つどもえとなる=2日、東京都千代田区の衆院第2議員会館で

 菅長官は8日の演説会で冒頭から安倍首相への「心からの敬意」と「最大限の賛辞」を述べた。経済政策ではアベノミクスの継続を打ち出している。日銀による国債や金融商品上場投資信託(ETF)の爆買いといった「異次元の金融緩和」も続く見通しだ。

 日本総研の河村小百合主席研究員は「国民に資産があるのに中央銀行が国債などの買い入れを続けているのは、外国から見たら異様。株価が下落してETFの価値が下がり、日銀が債務超過に陥るようなことになれば、国際的な信用を失ってしまう」と危ぶむ。

 そして河村さんは「今が良ければいいと緩和を続けるのは、次世代に負担を押しつけていることにほかならない。希望を持てない若者が増え、消費は増えず、日本経済は転がり落ちていってしまう」と懸念する。

具体的な見通しなく「デジタル庁」の創設を提案

 菅長官が示した施策で目新しいのはデジタル庁の創設だ。デジタル行政を一括して担う省庁をつくる。だが、ITジャーナリストの井上トシユキさんは批判的だ。

 「具体的な見通しがないまま意欲だけ示されても、余計な役所ができるだけ。マイナンバーカードなどのデジタル行政を国民にごり押しして、監視社会をつくりたいのかと思われてもおかしくない」

マイナンバーを ごり押し

 こういう懸念が出るほど、安倍政権はマイナンバーをごり押しした。マイナンバーに加え、住所、氏名などを記録したマイナンバーカードを普及させようと狙ったのがその1つ。まずは公務員からと、公務員本人や、その家族の取得状況を再三調査した。


 さらに健康保険証や身分証などの機能も持たせ、さまざまな個人情報と関連づけることを画策。新型コロナ対策の給付金で電子申請が混乱した際には、逆手に取って預貯金口座とマイナンバーとひも付けをすれば「迅速に給付できる」とアピールした。

 井上さんは「菅長官は総務相時代からデジタルの世界に思い入れがあるようだが、威勢の良い言葉だけで、具体的な手法や中身についての言葉がない。『菅プラン』を打ち出すチャンスなのに、用意していないのか」と指摘した。

仏頂面の鉄壁守備

 菅長官と言えば記者会見での仏頂面。官房長官として原則1日に2回、会見し、「そのような指摘は当たらない」「コメントは控えたい」と鉄壁の守備をたびたび見せた。政府のスポークスマンとしてどうなのか、とも思うが、ジャーナリストの江川紹子さんは「政治家がどうこうというより、こちら側の姿勢が問われている」と記者側に目を向ける。

 「例えば、首相の記者会見を毎週開くとか、冒頭のスピーチと質疑応答の時間の割り振りを決めるとか、重ねて質問する『更問い』を認めさせるとか―。記者側から求めて、首相が応じなかったら『おかしい』と書けば良い。批判する前に、まず私たちの対応が大事なのでは?」

官僚人事を握り強権ふるう「こわもて」っぷり

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