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人里に出没のクマ、駆除で絶滅の心配も 人間との共存の道はʕ´•ᴥ•`ʔ

(2020年10月21日東京新聞に掲載)

 日本海側を中心にツキノワグマが大暴れしている。石川県ではショッピングセンターに立てこもり、新潟県では死者も出た。住民の不安は強く、駆除数は急増している。昨年は過去最多を更新。今年もハイペースが続いている。とはいえ、クマは生息数すらはっきり分かっていなく、絶滅を心配する人もいる。人間とクマが共存する道はないのか。 (大平樹、古川雅和)

駅の真ん前の商業施設に侵入

 「まさかこんなところにクマが出るとは…」。石川県加賀市の商業施設「アビオシティ加賀」管理会社の担当者は驚きを隠せない。それもそのはず。施設はJR加賀温泉駅の真ん前にある。山代温泉や片山津温泉など近隣の温泉地への玄関口で、人の乗り降りはまずまずある。近くには観光案内所や量販店、病院や学校が立ち並んでいる。

店舗にクマが侵入したことを知らせるアビオシティ加賀の従業員=19日、石川県加賀市で

店舗にクマが侵入したことを知らせるアビオシティ加賀の従業員=19日、石川県加賀市で

 その施設に19日早朝、体長1.3メートルほどの雄のクマが入り込み、臨時休業に追い込まれた。この2日前には、山側へ約3キロ離れた山代温泉で男女3人がクマに襲われてけがをしたばかり。それもあって、騒動はテレビのニュースでも大きく報道された。

 担当者は「クマのことは意識していたが、ここで出ることは想定していなかった。客と従業員に被害がなくて良かった」。クマは13時間後の19日夜に射殺され、施設は20日に営業を再開した。

猛暑と雨不足でドングリ不作…空腹に耐えかね

 加賀市に限らず、石川県内ではクマの出没が相次いでいる。県自然保護課によると、足跡などの痕跡も含めたクマ出没情報は13日時点で462件に上る。例年なら年間で200件ほど。すでにその2倍を超えている。

 石川県ばかりではない。日本海側の各地を中心に、クマが次々と人里に下りてきている。昨季を通じて651件だった秋田県はすでに940件。20日の時点で1091件の新潟県では、襲われた1人が亡くなった。実に19年ぶりの死者だ。

 「クマ多発」の原因は、ドングリの不作だ。

 クマにとってドングリは冬眠前の大切な食料。環境省鳥獣保護管理室によると、今年は夏の猛暑と雨不足で、ドングリをつけるミズナラやコナラ、ブナが各地で凶作、大凶作になっている。そのせいで、山の中だけでは空腹を満たせず、クマが人里までえさを探しに来ている。

山から離れた海沿いに…「どうやってここまで」

 えさ不足は相当深刻なようで、クマの行動範囲は山から遠く離れた海沿いにまで広がっている。

 加賀市橋立町。11月初旬に解禁されるズワイガニ漁で知られている。同じ加賀市といっても、クマが立てこもった商業施設からは北西に4キロ離れた海辺の漁村だ。そこにクマが出た。

 「嫁入りして42年たつが、クマは初めて」。中越(なかごし)由美子さんは驚きを隠せない。中越さんは橋立にある「蔵六園」を管理している。江戸時代後期に隆盛を誇った北前船主の屋敷と日本庭園がある施設だ。

 蔵六園の防犯カメラが10日未明、体長1メートルほどのクマの姿を捉えた。その日の昼には、玄関前で泥の固まりのようなものを見つけた。なんと、クマの「落とし物」だった。

 中越さんは「山からクマが通ってこられるような川もない。ここまでどうやって来たのだろう。庭の草むしりや趣味の山野草取りに1人で出るのが怖い。近所では畑に出るのをしばらくやめる人も出ている」と声を震わせた。

「件数も出没場所も、今年はちょっと異常」

 「件数も出没場所も、今年はちょっと異常だ」。猟をして55年という石川県猟友会加賀支部会員の三谷亮吉さん(79)は語る。三谷さんは加賀市のクマ出没で駆除に出動している。

 本来、クマは怖がりで人の気配があれば逃げるし、音にも敏感だ。ところが、今年は車通りの多い国道を越え、街中に出てきている。三谷さんは「人と車に慣れてきている。人の食べ物のおいしさも知ってしまったのでは」と心配する。

民家近くで見つかり、麻酔を打たれた雄のツキノワグマ=2016年6月、長野県千曲市で

民家近くで見つかり、麻酔を打たれた雄のツキノワグマ=2016年6月、長野県千曲市で

 人が襲われるケースも相次いでいる。ツキノワグマによる人的被害は本年度8月末で59人。2018年度の50人を上回った。人々の不安は強く、それが駆除数の増加につながっている。

 環境省によると、今年4月から8月までに2965頭のツキノワグマが捕獲された。このうち約95%の2800頭が捕殺された。この5カ月間の捕殺数は、過去最多となった前年度1年間(5283頭)の半分を超える。

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